組織における動機づけの問題を考える上での前提となる考えについて | Work , Journey & Beautiful

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組織マネジメントの中心的な課題は2つである。それは

①コーディネーション
どのような情報のもとで誰が意思決定を行うか、必要な情報を確実に入手できるコミュニケーション・システムをどのように設計するかという課題

②動機づけ
それらプロセスにかかわる各個人が、自らの役割を積極的に果たすような保証を設けること。


の2点だ。

そもそもなぜ動機づけが課題になるかというと、組織に関わる各個人の私的な利益と、他人の利益、個人が所属するグループの利益、あるいは、社会全体の利益とがほとんど合致しないからだろう。

いわば概念的に個人と組織の関係を捉えるならば、個人と組織をつなげるものは組織的なプロセスの中でどのような役割を担い、実行するか?を明らかにした「契約」でこそ組織と個人は繋がっている。

もし仮に、その契約にあらゆる発生する可能性がある状況それそれについて各当事者が何を行うべきかが正確に指定されており、またそれぞれの事態において発生するコストと利益の配分方法が、各当事者にとって最適になるように調整されているような「完備契約」であれば動機づけの問題は起こらない。

言い換えるならば、動機づけの問題は①契約には完備な効力あるものとして記述できないものがあるから②常に人は合理的(自分自身の利益になると認めたことしか行わない)なものではない、からこそ発生する。

当たり前の話ではなるが、完備な契約を作成し、実行させるためには多くの問題がともなう。それは例えば余地範囲の限界、不正確な言語、解を計算する費用限界、精緻な計画を作成する費用限界などだ。これら人間に伴う限定合理性があるゆえに、現実的な計画はほぼ全てが不完備である。では契約が不完備であることでどのような問題が発生するかというと、①契約違反(決められたことをやらない)、②事後的な再交渉である。

だからこそ、契約(計画)にはなかった事態の発生は不可避である。(機会主義的行動の発生可能性がある、という)むしろ現実の契約においては、当事者個々の利益が必ずしもうまく組み合わされているとはかぎらない。そのため、利己的行動に走る余地が生じ、効率的な計画の実現が妨げられてしまう。

不完備な契約に対して重要な補完機能を果たすのは、当事者が相互関係の上で抱く漠然とはしているが共有されているはずの期待である(=暗黙の契約)。実際に期待が共有され、共通の理解が得られている限り、暗黙の契約は、限定された合理性を有効に利用し契約コストを節約する強力な手段となりうる。例えば、企業文化・企業理念など共有された価値観、思考法、物事の処理手順に対する期待として捉えられているものは、暗黙の契約の重要な一側面になっている。 もちろん、暗黙の契約には、その性質上、法的拘束力はほとんどない。

いずれにしても契約の不完備性対応としての暗黙の契約は期待形成に役立ち、予期しなかった状況に対処するための決定プロセスを確立する。同時に、詳細な契約内容を作成するという難問も回避できる。しかしながら、こういった解決方法にもある種のコストがともなうかもしれず、そのため限界がある。




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