元々は就職できなかったフリーターやニート向けに就職支援策として実施されていたジョブカードが就職活動生にも適用されるようになるとのこと。相互理解を深め、組織と求職者のミスマッチを防ぎ、関係をよりよくするきっかけとなればいいな、とは思う一方で、些か対症療法的すぎやしないかと感じるところも。
企業は採用活動を行うに当たり、「二つの本音」、それは、新卒採用は「ポテンシャル採用である」という本音と、「早く戦力になって欲しい」という本音を抱えている。二つとも一見矛盾しているものの紛れも無く本音なわけで。
とはいえ社会人経験が無いのだから早期戦力化するか否かは解らないからこそ、このバランスはある意味で保たれていたんでしょう。
企業は理念やビジョンを求職者に伝え、求職者の想いを確かめるというコミュニケーションに時間をかけてきた。そして企業はコミュニケーションを通しながら、コンピテンシーを評価し、求職者自身も仕事内容は勿論のこと会社への理解を深めていった。
その結果として、新卒採用者は多くの場合、仕事そのものだけではなく会社そのものに対するロイヤリティが高くなり、定着率もよく、ひいては優秀な社員が育ち、組織力の向上に貢献してきた。(勿論例外はあるが)
しかしジョブカードにより今の能力が(一部とはいえ)顕在化されることにより企業の「目」が動くのであれば由々しき問題ではないかと思う。ただでさえリセッションに突入した今、現場は一層のスリム化(それは常に現場負担の増加を伴う)が進む。ひいては現場は育成力を損ない、極力戦力化するための労力が惜しまれることになるだろう(ただでさえ人を育てることに価値を見出だせなくなっている人が増えているのに、だ)。こうした流れの中で、ジョブカードが単なる参考情報のままであり続けるか否かは疑問だ。
翻って、仮に企業が早期戦力化を重視するならば、当然求職者自身も自分の能力を示すことに力点をおくようになるだろう。就職活動で最も重要なものの一つは「納得感」だ。必ず突き当たる社会の様々な壁を立ち向かうべき試練と捉えるか、逃げ出す言い訳と捉えるかは、会社を理解し、働くことで自身が得られる価値や目的を認識しているか否かによる。そしてそういった価値や目的は、採用活動において、理念やビジョンをコミュニケーションする上で、内省し、アウトプットすることで見出だされる。能力重視の採用活動へと移行した時、果たして求職者は自己認知を深めることが出来るかというとこれまた微妙だ。
とはいってもやるものはやるんだろうし、どちらにせよ現場が即戦力を求める流れは変えられようがないのだろう。
ジョブカードが油を注ぐことになるのであれば殊更、企業・求職者ともに、コミュニケーション能力を高めることが求められるんだろうね。