人間の醜さ全開なのに読後感は悪くない。シャロン・ボルトンのミステリ小説『身代りの女』 | てっちゃんの明日を探して

てっちゃんの明日を探して

小説やドラマの感想、それと時事問題について、思ったことを書き殴るブログです。

いやあ~~~このミステリは面白い!!

シャロン・ボルトンの小説『身代わりの女』。

後半、ページを繰る手が止まりませんでしたよ!

 

あらすじはこちら下差し

卒業を間近にしたパブリック・スクールの優等生6人が、泥酔して道路をわざと逆走させた自動車で、母娘3人の命を奪う大事故を起こしてしまう。20年後、事故当時ひとり罪をかぶり刑期を務めたメーガンが、国会議員、辣腕弁護士と、いまや成功した人生を享受している5人の前に姿をあらわす。身代りとなったメーガンは、彼らと、ある〝約束〟を交わしていたのだった。心に罪悪感を抱えて生きてきた5人の保身と利己心が、真意の読めないメーガンの言動と交錯していく。危険な契約の先に待つものは……⁉ オックスフォードを舞台にした予測不能&一気読み必至のサスペンス小説。2024年最大のミステリー話題作。

 

このミステリの何が面白いって、犯人あてもさることながら(ミスリードに惑わされて私もハズしたえーん)、人間心理の暗部を、これでもかと見せつけてくれるところです飛び出すハート

 

およそ人間のふるまいのなかで、もっとも醜く、軽蔑すべきもののひとつが「自己保身」だと思うんですよ。

政治家の「秘書が勝手にやりました」「会計責任者が勝手にやりました」っていうアレね。

んなわけないっ!!!ムキームキームキー

ってみ~~んな知っているから、アレをいう政治家の品性の下劣さに身震いするわけ。

 

この小説に登場する、ビバヒル(ご存じ?)のごときお金持ちのお坊ちゃんお嬢ちゃん5人も、「友達」1人に罪を押しつけて、自分たちの「輝かしい未来」を、なんとしても失うまいとするんですよ。

その5者5様の、警察の取り調べでのヘドがでそうなゲロー言い訳が、1章の見所。

しかも、事故を引き起こした罪が最も重い2人が、最も卑怯なんだから、読んでるコッチもハラワタ煮えくり返るムキー

人間って、18歳にしてすでにここまで精神が腐るもんなんだなあショボーン

 

それだけじゃないんですよ!

彼らの罪をかぶってくれた「友達」に対して、その後の彼らがした仕打ちときたら!!

人間がいちばん凶暴で残酷な動物だという証明のような、恐ろしいふるまいです不安

 

2章は、事故から20年後、罪をかぶって服役したメーガンが出所したあとの話です。

もちろん、メーガンは彼らに復讐しますよ!!!ムキームキームキー

しないわけがないでしょう?

優秀な仲間内でも最も成績優秀で、美人で、マトモな人間だった彼女は、18~38歳という人生で最も輝かしい20年を失ったのですから。

 

このメーガンの復讐がまたいいんだ飛び出すハート飛び出すハート

メーガンは5人の元を次々訪れますが、「オマエを殺してやる!」なあんてわかりやすいセリフで脅したりはしないんです。

表面は友好的に、でもじわじわと真綿で首を締め付けるように、5人の精神を蝕んでいくんです。

 

たとえば、私的には最も罪の度合いが低いと思うアンバー。

18歳の彼女はいつもおどおどして、付和雷同で、成績もいちばん振るわなかったのに、いやだからこそ爆  笑20年後は立派な政治家になっています。

いつも忙しいアンバーが、3歳と5歳の娘が寝た後に寝室に行くと、娘が見慣れないゾウさんの縫いぐるみを抱っこしていました。

「誰にもらったの?」と聞く母。

娘の答えはもちろん「メーガンおばちゃんよ」。

😱

メーガンは勝手にアンバーの幼い娘たちに接触してたんですよ!!

しかも、その後の娘のセリフ・・・。

「メーガンおばちゃんはゾウなんだって。ゾウは何も忘れないから」

😱😱😱

こっわ!!!!不安不安不安

 

こんな感じで、成功した5人の生活を侵食していくメーガン。

20年間築き上げてきた(そんなものは砂上の楼閣だけど)自分の人生が破壊されると思うと、恐ろしくて眠れない、食事ものどを通らない、だからなんとかしたい5人は、メーガンがもっている「事故は6人で起こした」という「証拠」を探して抹消しようとしますが、うまくいかない。

そして、メーガンが20年前にした「約束」として、5人それぞれに最も大事にしているものを差し出せと迫った後、ついに惨劇が起こります・・・。

 

この作品には、ひとつのナゾがあります。

メーガンはなぜ5人の罪をかぶったのか。

貧しい母子家庭育ちのメーガンは、お金持ちの5人が、彼女を本気で友達とは見なしていないことを知っていました。

彼女も彼らを親友だなんて思っていなかった。

なのに、なぜ?

そのナゾが明らかになったとき、最も利己的で最も事故の責任が重い人物が、驚くべき利他の行為を行います。

このあたりがこの作者はウマいんですよね~~。

悪役的な人物も、徹底して悪いヤツじゃない。

心の奥底にはちょこっとだけ柔らかい部分もあることを、しっかりと描いているんです。

だから、人間ドラマとしてすごく面白い爆  笑

 

そんなわけで、とんでもないイヤミスなのに、読後感は不思議と悪くありません。

罪から逃げ続けた者と、罪と向き合って償い、地獄を見た者。

その違いをメーガンが端的に示したひと言が、とても重いせいもあるでしょう←聞いてる?裏金議員のみなさん

推理小説としても、社会派ドラマとしても、人間ドラマとしても楽しめて、登場人物のキャラもめちゃんこ立ってるこの1冊。

おすすめです。

 

これこそハリウッドで「ちゃんとした」映画化をしてほしいなあチュー

このところのハリウッド映画はロクなのがないんでね💦

それこそかの青春映画の名作『セント・エルモス・ファイアー』のブラックバージョンみたいな映画になると思うので、“ブラット・パック”に演じてほしかった!(もうおっさん・おばはんすぎてムリだけど爆  笑

 

最後に、この本を読んだアナタにぜひ聞いてみたい。

5人のなかで、「メーガンに対して」もっとも罪が重いのは誰だと思う?

私は3/5のうちのアイツだと思うなあ・・・プンプン