アイスランド・レイキャヴィク署の捜査官エーレンデュルを主人公にした、作家アーナルデュル・インドリダソンのミステリ・シリーズ第6弾『印(サイン)』。
いつも曇ってるか、雨降ってるか、雪降ってるかで、ひらすらに陰鬱なアイスランドの、ひたすらに気が滅入る事件を描く、ひたすらに暗いシリーズ。
でも、その暗さがクサヤのようにクセになり
私は大好き!
だってこのシリ-ズは、「事件」を通して、人間の業や人間心理の深淵を描いているんですもの。
そういうの、私の大好物![]()
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今回はこんな話![]()
マリアという女性が、湖のほとりのサマーハウスで首をつっているのを発見された。
夫によると数年前に親密だった母親を病で失い、以来精神的に不安定になっていたという。
死後の世界に興味をもち、降霊術師のもとにも出入りしていた。
自殺で間違いない。だが本当に?
もちろん、単純な自殺のわけがありません!
事件のキーポイントになるのは、死の床にあった母親の「死後の世界があったら、あなたに合図を送るわ」という言葉です。
そして「印(サイン)」はマリアの前に現われた!!
でも・・・そんなことってあるわけないですよね![]()
だから、最初から結末は見えている。
ただ、この事件の結末は二重になっています。
どちらの結末がよりひどいのか、私にはなんとも言えません。
ただただ親の死に翻弄された娘・マリアが、哀れでならないんです。
そして、マリアの事件と交差する、息子が長いこと行方不明の老人の話。
シリーズの最初から通奏低音のように流れる、主人公エーレンデュルの、少年時代に雪山で行方不明になった弟の話。
このふたつがメイン・ストーリーに見事に重なり合って、深い余韻を残します。
一緒にいたのに、弟の手を離してしまった(離れてしまった)自分を、ずっと許せずにいるエーレンデュル。
彼だからこそ、父親の死にずっと後悔を抱き続けていたマリアの心情に寄り添い、「見つからない息子」を待ち続ける老人の心情に寄り添い続けることができたのでしょう。
いやもうとにかくね、3つの物語が絡まり合ってラストを迎えるこの構成が、「うう~~ん」とうなるほど見事なんですよ!
個人的には「間に合わなかった!」という老人の話の結末に、「そう来たか!やられた!!」感が強かったです。
普通はこれ、間に合わせるよね![]()
間に合わせないところがインドリダソンの真骨頂なんですよ。
だから暗い![]()
まあ今回は、いつもエーレンデュルに噛みつき、やっかいをかける(今回もかけてはいるけど)ヤク中の娘エヴァ=リンドが、やっと少し落ち着いて、オヤジにいいことを言ってくれているのが救いです。
「弟をちゃんと死なせてあげなよ」
たしかに、死者を「ちゃんと死なせてあげる」ことほど、生き残った人間にとって大事なことはありませんね。
というわけで、良質のミステリを求める方に、この1冊!
自信を持っておすすめできます!!
