5月12日付けの産経新聞。「新聞に喝!」欄。

 政治団体「つばさの党」が行った明らかな選挙妨害に関連して、過去のマスコミの言動を斬っている。思いきった論評であった。

 著者は、ブロガーの藤原かずえ氏。

 氏は言う。

《「ヤジ正当化」で民主主義の根幹を破壊したのは、朝日新聞など一部メディアではなかったのか。過去を総括せよ》と。

 たしかに、一部マスコミ(大部分のマスコミ!?)に「ヤジの正当化」の過去があった。しかも、組織的で悪質なヤジであった。とくに安倍元総理へのヤジは、常軌を逸していた。ヒドかった。彼らは演説を聴きに来た聴衆とは明らかに違って、組織的で執拗な言動を繰り返した。小生が柏市駅頭で実際に見聞きしたことでもあった。

 藤原氏は、マスコミをこう非難する。

《平成29年に東京・秋葉原で行われた安倍晋三首相(当時)の都議選応援演説では、組織的な呼びかけに集まった一部聴衆が「安倍やめろ」「帰れ」と大合唱し、執拗に演説をかき消しました。安倍氏はこの妨害者に対し「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と抗議しましたが、一部新聞は「批判を連呼しても主権者じゃないか。このむき出しの敵意、なんなのか」(朝日)、「首相、聴衆にまで激高」(毎日)、「敵と味方に分断」(東京)などと安倍氏を徹底的に非難し、ヤジを正当化しました。

また、令和元年の参院選での安倍氏の札幌演説で「安倍やめろ」「帰れ」という大声を演説にかぶせた人物を北海道警が移動させた事案に対しては「市民を排除。ヤジも意思表示のひとつの方法」(朝日)、「警察の政治的中立性に疑問符」(毎日)、「市民から言論を奪うな」(東京)などと非難しました。

 これらの論調に多くのテレビメディアも同調した結果、安倍氏は選挙妨害者との接触を避けることを強いられ、遊説場所を告知しない「ステルス遊説」と揶揄(やゆ)された選挙運動を展開するに至りました。また、警察の萎縮もうかがえます。例えば安倍氏暗殺事件では、テロリストが安倍氏に近寄って2発を発砲するまで取り押さえることもできませんでした。

 そもそも「安倍やめろ」「帰れ」というヤジは意見表明でなく、演説者に対する恫喝(どうかつ)的な命令であり、非言論で言論をかき消す「言論の自由」への挑戦行為です。1人のヤジを認めれば、他のすべての人のヤジも認めなければなりません。秋葉原の事例と比較してはなはだ小規模で、候補者が他の候補者に質問する体裁を取る「つばさの党」の妨害者を警察が警職法で排除することは、法の下の平等の原則から不可能です。

 何よりも、このような時・場所・方法を選ばない身勝手な「表現の自由」による最大の被害者は、候補者の政治的主張についての「知る権利」を侵害された一般聴衆です。……以下略》