森鷗外は、やっぱり凄い!
この本を読んで改めて、畏敬の念を深めた。
『宮内官僚 森鷗外』(野口武則、角川新書)。サブタイトル:「『昭和』改元 影の立役者」。
出版社のPRはこう言う。
〈「昭和」は完璧な元号だった〉
「大正」は過去にベトナムで使用済みの「不調べ」の元号だった。明治天皇后には誤った追号が贈られてしまっていた……。歴史の重みを失った近代日本の綻びを正すため、鴎外が最後に挑んだのは元号制度の整備だった。それまで使われたことがなく、由緒正しい漢字を重ねた完璧な元号「昭和」は如何にして生まれたのか? 「令和」改元の深層に迫った政治記者が、膨大な公文書の中に隠された晩年の暗闘に初めて光を当てる!
書いたのは、毎日新聞の野口武則記者。
筆者は言う。「私は令和改元にの取材に関わった一介の新聞記者に過ぎない」と(同著「あとがき」)。いやいやご謙遜。新聞記者でありながら、学術論文の書き方を一から教わり、森鷗外記念会の会員になり、山崎一穎先生ほかの薫陶を受けた結果の労作がコレ。すばらしい内容であった。
思い返すのが、当時の新聞論調。安倍総理(当時)憎しのあまり、ヤレ「安倍」「安」の文字が元号に入るだとか、「令和」の「令」は「命令の令」だとか、そんな論調ばかり。新聞記者のレベルの低さにほとほと辟易したものだった。
この本を読んで、「こういう新聞記者もまだいたのか」というオドロキは、読後の副産物であった。
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