『日本が好き だから言わせてもらいます』(ジェイソン・モーガン著、モラロジー道徳教育財団)。

 ジェイソン・モーガン氏。最近あちこちで見かけるようになった。肩書きを紹介すれば、「麗澤大学准教授・モラロジー道徳教育財団道徳科学研究所客員研究員」とある。小生と同じ職場ということで、親近感を持った。
  特にひかれたのが、「キャンセルカルチャー」に関する記述だった。
▽言論の自由と言論の不自由
  日本人やアメリカ人は、民主主義の国に住んでいると信じている。しかし、本当にそうだろうか。……日本もアメリカも民主主義の定義から外れた国になってしまっている。なぜなら、両国では、違う考えを受け入れないという現象が実際に起きているからだ。(p17)
▽キャンセルカルチャー
  「キャンセルカルチャー」は、ソーシャルメディアなどを利用して、社会の大半が不適切と判断する発言や行動をしたとされる人物の存在を拒否し取り消してしまう。つまり、「キャンセルする」ことを意味している。……そして、それが日常的に起きているのが現在のアメリカなのだ。ターゲットを決めて、アラを探し出し、もしくは拡大解釈し、「キャンセル」することも可能だ。そして、誰かを「キャンセル」することがアメリカの「文化(つまりカルチャー)」の一部になったこと、否、それがアメリカン・リベラルの「文化」そのものになってしまったことを示しているのが「キャンセル・カルチャー」という言葉なのだ。(p30)
 ……「キャンセル・カルチャー」は敵と認定した相手を社会から抹殺することが目的なのだ。(p56)
  具体的には、次なる例に衝撃を受けた。
〔例1〕『太平洋戦争における性サービスの契約』という学術論文を発表したアメリカの学者に対して、韓国内からとくに激しい非難が浴びせられた。炎上・嫌がらせメール・中には殺害予告までも。同論文は「慰安婦は契約に基づいた売春婦であった」という趣旨だった。
〔例2〕アメリカで国論を二分する中絶問題。長らく「ロー対ウェイド判決」(中絶する権利を保障)とした判決を、2022年6月  米最高裁判所 「ロー対ウェイド判決」をひっくり返した。その保守派の最高裁判事に対して暗殺をツイートが呼びかけた。
〔例3〕日本でもあった。あまり話題にならなかったが、百田尚樹講演の突然の中止。2017年一橋大学で催されるはずだった同氏の講演が急に中止になった。
 ……、以上、総じてこの本は、思索的・実証的で、かつ深かった。

 写真。栗原はるみのカレー粉。記事とは関係ありません。