チャチャのように

  命を懸けて家族を守った

    犬たちの歴史と

   それに応えようとした

   人間たちの試行錯誤の

   歴史の地続きがある








もうすぐ私の誕生日が

巡ってくる

それは

私が生まれる前から

我が家を守ってくれていた番犬

チャチャの命日でもある



日本の高度経済成長期の

真っ只中

地域にはまだ野犬の姿があった

犬は「ペット」や

「相棒」という関係性ではなく

家や家族を守る【番犬】としての防衛の役割が非常に強かった

時代だった



チャチャは圧倒的な存在感と

頼もしさを放つ

立派な大型犬だった

普段は穏やかに伏せをしながらも、鋭い視線は常に家族の周囲を警戒していた



深い忠誠心の裏には

強い縄張り意識と闘争心が

秘められており

敷地内に野犬が侵入すれば

直接対峙は避けられない

激しい威嚇

本能に突き動かされ

歯を剥き出しにした唸り合い

そんな緊迫した状態が日常的に

繰り返されていた




野犬の気配がすると

父と母は慌てて玄関を開けて

チャチャを屋内へ

避難させていたが…


事件は

起きてしまった





(※以下、凄惨な描写を含みます)













チャチャの

地響きのような唸り声と

聞いたこともない悲鳴

お勝手にいた母が

弾かれたように玄関へ走る



母の背後から幼い私の目に

飛び込んできたのは

野犬の群れに集団で襲われる

チャチャの姿だった



異変に気づいた近所の大人たちが

次々と集まった

向かいの家の

おじさんとお兄さんが

大きな毛布かシーツのような物を抱えながら駆けつけ



「急いだ方がいい」と

チャチャを包み込み、犬猫病院へと車を走らせてくれた




首元と耳の深い噛み傷から感染症を起こしたチャチャは

高熱に苦しんだ末

私の誕生日に旅立った




それは


幼い私が 人生で初めて

「死」と「別れ」

を同時に

突きつけられた瞬間だった













現代の基準から見れば

当時の外飼いの過酷さや、野犬との闘い、不十分な医療環境は

「かわいそう」の

一言に尽きるのかもしれない



それぞれの時代に

それぞれの命との向き合い方が

あり、愛情の形があった

過去の積み重ねと

反省の歴史の上にこそ

現在の安全で衛生的な犬の暮らしが成り立っている



 昭和の終わりに向けて

フィラリア予防薬や混合ワクチンが普及し、動物病院は

「病気になって行く場所」から

「病気を予防するために行く場所」へと劇的に進化し


 チャチャが生きた昭和から

現代の令和へ時代背景と、ともに

獣医療と飼育環境は

凄まじい進歩を遂げた。












何十年という

月日は流れ

新秋の 

山並みを覆う

遥かな空の彼方から


今の犬たちの

暮らしを眺めながら




〝いい時代になったな〟と



チャチャが穏やかに

笑ってくれていることを

私は願ってやまない。






アルバムの台紙から剥がし

取り出した写真

チャチャの事をブログにしようと

しなければ


私は 一生 

気が付かずにいただろう


お父さん、

何で写真の裏側に書くの…