それから少しだけ平穏な日々が続いた。
ううん、平穏と言うのとはまた違った。
ノンちゃんは就職しても相変わらずあたしにお金をせびってきた。
殆ど返ってこないお金を、それでもあたしはあちこちから工面しながらノンちゃんに渡した。
自分の借金がどのくらいなのかは考えたくなかったし、どうでもいい事のように思えてた。
まるでハリウッドスターの結婚のようにあたしには無関係な非現実的なものだった。
おかしいって言われるかもしれないけどまずノンちゃんが、あたしがした事によって救われたり喜ぶ事の方が何より優先だった。
だけどそのうち、ノンちゃんとの連絡が途絶えがちになった。
ノンちゃんのために空けていた大好きな夜の電話の時間もノンちゃんから鳴る事は減っていった。
たまらずかけても留守電に切り替わって折り返しの電話はついに来ないまま朝になった。
携帯電話を握り締めながらずっとノンちゃんからの電話を待ち、そのまま眠る事が多くなった。
それはまるでドラマや歌の歌詞の中だけの事だと思っていたけれど携帯電話が鳴るのを心待ちにして眠れない夜が来るなんてドラマチックだと、どこかで酔っている自分もいた気がする。
なんでだろう、あたし何かしたかな。
すごく不安にかられた。
それでも時々思い出したように鳴る電話ではノンちゃんは変わらない様子だったから、あたしは小さく始まっていた変化を見落としてしまっていたのだ。
そして変化は自分にも訪れていた。
それは割と初期に分かった。
調べる前から確信していた。
あたしは妊娠している。