仕事が終わってリュウに電話すると大抵は逢ってくれる。
場所は新宿だったりリュウの部屋だったりその時によるけれど、どちらにしてもあたしは自分の家からそんなに離れていないから帰りが楽だった。
最初はやっぱりセックス直行コースだったのだけれど3回目からは食事を楽しんで別れたり、リュウがたまらなく好きだと言う新宿の高島屋をブラブラして解散したりとリュウのつかみにくい性格に振り回されたりもした。だけどそれが嫌じゃなかった。
あたしに、自分がなんの仕事をしているかを話したからか、リュウは仕事の話もよくするようになった。大抵はその日の入金に間に合わなかった客の悪口、それから取り立ての話。
リュウは自分のところで借りてる客をとにかく心底ばかにしていた。
リュウはいわゆる「090金融」という携帯1つで金貸しをしている闇金だった。
ここで借りるほどに落ちぶれた客たちをリュウは自分と同じ人間だとは思ってないときっぱり言った。
大抵の客は暴利な返済額に金利だけで精一杯で、だけど誰にも相談もできずパンクしてしまう。
リュウはそんな客たちから千円、二千円の返済額を頼りにしているのではなくパンクして気の抜けた彼らを「再利用」してやると言った。
女だと大体は水商売に売り飛ばす。
キャバクラとか甘ったるいものではなく即・風俗コースらしい。
もちろん優良店ではなくゴムなしで本番をするような店だ。
リュウいわく「ブスでもデブでも老けてても女ってだけでどうにでもなる」らしい。
男の場合は口座や携帯電話などとにかく本人の身分証明をフル活用してどこかに売っていると言っていた。
あたしの仕事の話には興味はなく、あたしの友達の話も聞きたがらない代わりにリュウはあたしに最高のセックスと裏の世界を面白おかしく話してくれた。
それは「怖いな」と思うようなエピソードもあったのだけれどあたしはリュウの仕事には関わらないようにしようと決めていたのでまったくの他人事として聞いていた。
食事代はいつもリュウが出してくれる。
帰りが遅くなった時のタクシー代も知らないうちにバッグに入っていたりする。
あたしはリュウと逢うのが楽しくて、リュウとセックスすれば気持ちいいだけじゃない、少しせつなくもなった。
そういう自分の気持ちの変化に怖くなったのも事実だった。
「ねえねえ、それクリーニングに出さないと、落ちないんじゃない」
リュウがよくはいているお気に入りのパンツは多分もともとは真っ白だったはずだった。だけどいつの間にかくすんで裾の方は洗っても汚れが落ちないようだ。
他に服はたくさんあるはずだし買うお金もあるはずなのにリュウは高い確率でこのパンツをよくはいている。そういえば最初に逢った時らへんもこのパンツばっかりだった気がする。
「クリーニング出しても落ちねえよ」
リュウはあたしの乳首をなめたりかんだりしながら答えた。
無造作に脱ぎ捨てられたそのパンツがあたしの視界に入ったまま、あたしは眉間にしわを寄せながらあえいだ。
「でも気に入ってるんでしょ」
リュウはブランド物の服を着ているからこのパンツだってどこかお高いブランドのものに決まっていた。
リュウは答えずあたしと繋がろうとしている。
「あ・・・」
リュウが中に入ってきて奥まであたしを響かせる。
「あ、あ、あ、ん、あん・・」
「もっと声出せよ」
「ああ・・・」
「そろそろ帰る」
「そうだな」
リュウはまたあのパンツを履いた。
「何、どっか行くの」
あたしが聞くと
「麻雀」
着替えながらリュウが答えた。
リュウはよくあたしと別れた後、麻雀をしに行っているらしい。
まったく興味がないから詳しくは聞かない。
「別に気に入ってねえよ」
え?
喉が渇いてうまく声が出なかった。不思議そうなあたしにリュウが自分が履いたパンツをつまんで
「これこれ」
と笑った。
「別に気に入ってない。クリーニングとか面倒くせえし、だったら捨てる」
あたしはその時、「ふうん」だったか、「あ、そう」だったかなんて答えたのか。
忘れてしまったけれどリュウがさほど執着していない姿になんとなくモヤモヤとした気持ちになったのだった。