「いつも一緒にいたかった」

「となりで笑ってたかった」

「季節はまた変わるのに」

「心だけ立ち止まったまま」

ラジオから「M」が流れている。プリプリのあのヒット曲だ。

この曲をカラオケで歌う人は失恋するという噂が流れた時、恋人もいなかったのにあたしは歌わないように気をつけていた。

だけどユウコは構わず歌いたい曲を歌いたいだけ歌ってた。それに失恋もしてなかったしね。

今、この曲をまたユウコが目の前で口ずさんでいる。

「懐かしいね」

ユウコは笑ってジンジャエールを口にした。

「ほんとだね」

あたしも答えた。


ユウコとは高校からの友達だ。

しょっちゅう逢ってるわけじゃないけど2ヶ月に1回は逢うような感じ。

不動産会社の事務をしている。

リュウとの事は電話で少し話しただけだ。ユウコは興味津々で聞いてきた。

周りにこんな怪しい男いないからね、と最初こそ笑っていたけれど今日久々に逢ってあたしの話を聞いて、眉をひそめた。

「あんたさ、とりあえずもうやめな。犯罪だよ、闇金って、たしか。」

知ってるよ。

「そんなんに関わっていいわけない。もう連絡取るのやめなやめな。他にいくらでもセフレなんて見つかるよ」

ユウコは昔からあまり深く、ものを考えない。

あたしがリュウと逢っているのは最高のセックスに執着しているだけだと思っている。

だけどユウコはユウコなりに心配してくれているのも分かってるからあたしはユウコが嫌いになれない。

「まあね・・・」

あたしはそう言ってMに耳を傾けた。


あたしは自分のことを特別だと勘違いしたことなんて1度もない。

容姿だっていいとは思ってない。もちろん最低だとも思ってないけど。

でも、あたしより明らかに見劣りする(ような気がする)子に恋人がいたり、それが長い付き合いで結婚しそうだったりするのが不思議でしょうがない。

あの人たちはどこで男を見つけるんだろう。

生涯の恋人ってどこに行けば出逢えるんだろう。


ユウコはブスじゃないけど可愛くもない。目なんて小さくって離れてるし、肌だって吹き出物が多い。

服のセンスもあんまり良くない。一緒に歩くのが嫌だって程じゃないけどさ。

特別な才能があるわけじゃないから普通にOLやってる。「普通」だと思う。

だけど結婚を考えてる恋人がいる。付き合ってもう4年になる。

あたしはそれが羨ましくて、そして不思議でしょうがなかった。

ユウコや他の子にあって、あたしにないものを一生懸命探したけど、分からなかった。

男の人との距離の掴み方もいまいちだった。

セックスは思ったように簡単に出来る。セックスに持っていく雰囲気もうまく出せる。

だけど、恋人にはなれない。

夜じゃなくて昼に逢うこと、レンタルビデオ屋に借りに行くこと、他の女と逢うのを怒ること、それができない。

結果、リュウともうまく向き合えなかった。

リュウに特別だと思って欲しかったけどあたしはあのパンツが無残な形で捨てられたのを見た時、悟ったのだ。

あれはあたしだ。

あんなにしょっちゅうはいていて執着があったかと思ったあのパンツがクシャクシャに捨てられている。あたしはあれが自分と重なってしかたなかったのだ。

どうして?

どうして。

どうして。


あたしはただただ恋がしたかった。ずっと続くような恋がしたかっただけなのだ。

ユウコや皆にあって自分にないものを探すより、自分にあるものを探さなかったツケが今、やってきている。