どうしたらあたしがノンちゃんにお金を出してあげるのか、早い段階からノンちゃんは気付いていたのかもしれない。
それか、天性のようなものでうまくやれるのかもしれない。
別れるまでにノンちゃんにあたしが費やしたお金は「貸す」と言って渡しただけだったら、65万、遊んだ時とかそういう細かいものまで足していったら100万は越していた。
その金額が「少ない」と言う人もいた。「それくらいで済んで良かったね」と言う人もいた。
だけどあたしはどちらとも思わない。100万はあたしにとって充分すぎるほどの大金だったしこれより以下で済めばもっと良かったとも思う。周りの友達を見渡しても男にそこまで貢ぐ子は誰もいない。
1番惨めで1番自分を嫌いになったのは友達に借りた事だった。返済が回らない上にノンちゃんにも貸さなくてはならなかったある時、あたしは初めて友達に頭を下げてお金を借りた。皆、あたしがノンちゃんに貢いでいるのを知ってたから
「どうしようもなかったら貸してあげるから」
と、言ってくれた。もちろんそれに甘えるつもりはなかった。友達もまさか本当に貸すとは思わなかったはずだ。
だけどあたしはとうとう、そうしてしまった。
たったの2万がどうしても手に入らなかった時、ノンちゃんよりもずっと付き合いの古い友達から借りた。
彼女は手紙付きで私にお金を貸してくれた。もともとこの日は他の友達も含めて5人で飲みに行く日だった。
あたしはお金だけ借り飲みには行かず帰るつもりでいた。
待ち合わせより30分早くあたしと彼女は落ち合い、彼女はあたしに手紙を渡した。
いったん別れ、あたしは丸井に返済に行った。
中には2万5千円入っていた。
あたしはすぐに手紙を読んだ。
「これはノンちゃんのためじゃなく、あんたに貸すお金だからね。あんたがそれを何に遣おうと私はこれをあんたに貸すと思って渡します。何度も貸してはあげられないけど、代わりに利子もいらないんだから返せる時に返してください。
それと最近のあんたはどうしちゃったのかって泣きたくなるよ。皆、心配してる。だけど止めてもきかないのがあんただからもう何もしてあげられないけど見守ります。
最後に、せっかく久々に逢えたんだから帰るなんて言わないで少し飲んできなさい。余分に入れたお金で足りると思うよ。」
丸井に入る横道であたしの目からは涙が止まらなかった。
ありがとうとごめんなさいが何度も何度も頭の中を駆け巡った。
もう何度、友人たちの言葉を無視してきただろう。
それでもどうしようもなかった。
どうしようもなくノンちゃんを好きだった。
ごめんね、急にこんな事を思い出したの。これはお母さんに逢ってもらってから少し後の話だよ。
なんか急に思い出しちゃった。
ごめんね・・・。
予約した天ぷら屋さんは少し高いんだけどすごく美味しいの。お父さんが生きてた頃、特別な事があると行ってた。例えば、お姉ちゃんが受験に受かった時や、あたしの入学祝いとか、誰かの誕生日とかね。
そう、家族でばかり来ていた。だからここを選んだお母さんはどんな気持ちなのか少し考えちゃった。
中に入ると個室に通された。店内はたしか割と空いてたっけな。
座敷だから靴を脱いでノンちゃんはあたしの横に座ってお母さんがちょうど正面だった。
飲み物を頼んでそれが来て、それから食べ物をオーダーしたらすぐにノンちゃんが言った。
「すみません、今日はわざわざお時間作ってもらってありがとうございます」
こんな事、もちろんあたしは言うように頼んでない。だから感動した。お母さんもやっと笑顔になって「いいのよ」とかなんとか言ってたと思う。
「足、楽にしてくださいね」
正座していたノンちゃんはその一言で
「じゃあ、足崩させていただきます」
と言って足を崩した。あたしは最初っから崩してました。
「この子とお付き合いしているとか」
いきなり本題。
ノンちゃんは頷いて
「はい。」
と答えた。
「大阪で同棲したいとか」
お母さんは続ける。ノンちゃんが頷いた。
あたしはただ緊張してた。
お母さんは小さく咳払いして
「それは認められません」
まっすぐノンちゃんを見て、そう言い放った。