「今日ヒマ?うち来ない?」
リュウから短いメールが来た。無視できる。無視すればいい。無視するべきだ。
そしたら簡単に、あっけないほど簡単に終わる。
だけどあたしは
「いいよ」
と返事をした。
終わりにしよう。
ちゃんと逢って、そしてもう終わりにしよう。あの男に何かを望んでも、それはきっと叶わない。
最後にもう一度逢って、そして終わらせればいいんだ。
あたしにとって最後にもう一度リュウと逢うというのは、できればセックスも込みだった。
そんな事するから軽く見られると言われても仕方ないのだけど。
でも、セックスしたかった。
通い慣れたようにさえ思うけれど実際リュウの家に行くのはまだほんの数回だ。
そしてこれも今日で最後になる。
リュウはあたしを部屋に通し、ブツブツと客の悪口を言った。
あたしはそれを聞いてる振りをしながらソファに腰かけた。
「この部屋って」
リュウの愚痴を遮ってあたしは口を開いた。
「え?」
リュウはあたしを見ながら愚痴をやめた。その方がいい。グチグチ言う男は大概にしてモテないのだ。
「この部屋って、誰か本当は住んでるでしょう?」
リュウはあたしを見つめたまま頷いた。
「誰と?」
「同業者」
「今もいる?」
「いない。お前が来る時は出てってもらうようにしてる」
「そう」
やっぱりね。
良かった。謎が解けて!とあたしは少し嬉しくなった。最初の夜、やっぱり覗かれてたんだな。いや、今までのセックスも見られてたかもしれない。
嘘なんて簡単につけるのだ。
相手を傷つかせないためにつく嘘、自分に都合いいようにつく嘘。いろんな種類があるけれどあたしもリュウも少なからず嘘をつきながら生きているのだ。時には自分自身にさえ。
許そう、そう思う。
「黙ってて悪い」
リュウはあたしに近付きながらそう言った。
「いいよ、別に」
もう本当にいいと思ったからあたしはそう答えた。静かな空気が流れた。
「触らせて」
リュウはあたしの横に座り、そう言った。
「触って」
あたしはそう言いリュウの手を取り自分の胸に当てた。薄い生地の上からリュウがゆっくり、確かめるようにあたしの胸をなぞった。あたしは無表情でリュウのごつごつした手を見ていた。
この手が好きだと何度も思った。
何度も何度も思った。
だけど所詮、あたしたちは数回逢ってセックスしただけの関係だった。約束とか、手を繋ぐこととか、そんな事はできないような曖昧で簡単な関係だった。
なのにあたしはこの人に夢を見た。
あたしを救い出してくれると思っていた。
皆みたいに信じて、信じてもらえるような、そういう「誰か」をずっと探していたから。
あたしは、はっきりとわかったのだ。
リュウを好きな自分が好きだったのだと。
これを恋だと、大恋愛だと思い込みたかっただけなんだと。
一緒にいて感じる安らぎや刺激、そういう重要性より第3者に話して羨ましく思って欲しい、自慢したい、そういう欲求の方が強かった。
いつの間にかブラジャーが外され上に浮き上がっている。リュウはまだ服の上から胸を触り、やがて乳首を服からつまんだりして楽しんでいる。服の上にはっきりと乳首が浮き上がる。
「ん・・・」
あたしはわざと声を出した。リュウは乳首を押し当てたりして、やがて服をまくし上げると一気にあたしの胸をあらわにした。
リュウは舌を出し、あたしにキスした。あたしも舌をからめる。いやらしく音が鳴る。
唇からすぐ離し、リュウは乳首に舌を近づけた。ゆっくり舌が乳首に吸い付く様をあたしは見ていた。リュウはわざと見せ付けるようにする。
あたしは興奮していた。だってもう濡れていた。
リュウは舌を乳首に当て一瞬舐めてまた離した。あたしはそっと手をリュウの頭に当てまた胸に近づける。リュウはニヤッと笑い、今度は胸にしゃぶりついた。片方の胸を器用に揉みながら。唾液の音がまた響く。
「あ、あん・・ああ・・・」
あたしは夢中になって足を広げた。ワンピースの裾が広がるのが分かる。リュウの固くなった部分をあたしも撫で回す。
「おっきくなってるよ」
耳元で囁いてやる。
「すぐ入れたい、ダメ?」
リュウが甘えた声で聞く。
あたしもリュウもいつの間にか何も身に着けていなかった。
前もこのワンピースを着ていた時セックスした。
その時、リュウはワンピースをたくし上げて下着を脱がそうとしたけれど焦っていたのかうまく下に落ちなくて、結局下着を横にずらしてすぐに固く大きく反りあがったモノをズンッと入れてきた。
「あああ・・・!!!」
本気で喘いだ。深く、奥までリュウが入ってきた。
「スゲー・・・今日やべえ。お前の中。スゲー・・・しまる・・・」
リュウは言いながら苦しそうな表情でゆっくり動く。
「気持ちい・・・いいよ・・・すごいイイ・・・」
あたしは懸命に腰を振る。リュウは胸を揉んだりキスしてきたり暴れている。
「ああ・・・」
上になって、あたしはまた動く。
「当たる・・・すっごい気持ち・・イイ・・・あ、あん、あ・・・あ」
「お前、声すごい色っぽいね」
リュウの興奮が、余計にあたしを感じさせた。
その後もう一度して、横になった。
「すっごいよかった」
いつもどこかで冷静なリュウが今回は早々にイったことは、あたしにとっても満足いく結果だった。
「あたしも」
側にあったペットボトルを手に取りあたしはゴクゴクと飲んだ。リュウはあたしの乳首をまた触ったりしながら
「マジでよかったよ」
と笑う。
あたしも、あたしもだよ。
言わない代わりにあたしは笑う。
この笑顔が少しでも可愛く見えますように。
少しでもリュウの心に残りますように。
願いながら。
「ごめん」
あたしはリュウの手を止めた。
リュウは少しびっくりした顔であたしを見た。
「やっぱり今日はだめだ」
ここまでして?リュウの顔がそう言っている。
「は?お前何言ってんの」
リュウが少しイライラしてるのがわかる。当然だ。
あたしだってどうしたのかよく分からない。
セックスする気満々で来たのに。
「ごめん、なんか」
「やらせろよ」
リュウは構わず覆いかぶさってきた。
「ちょっと」
やめて、声にならなかった。
リュウがまたあたしの口を塞ぐようにキスしてくる。
「やだ」
やめてやめてやめて。
自分がわからなくなる。
でも、もうリュウとセックスはできない。そう思った、それがいいのだと。
「わかったよ」
リュウはあたしの腕を離した。
「ごめん」
リュウの背中を見ながらあたしは呟いた。