ノンちゃんは最後まで丁寧だった。
どこで身に着けた常識なんだろう、とあたしは感動していた。
結果的に
「わかりました。彼女が大阪に来る事はありません」
ノンちゃんにそこまで言わせたお母さんの勝利だった。
そこからは満足したのかお母さんはニコニコと屈託なくノンちゃんと会話をしていた。
あたしは同棲案が目の前で却下された事に腹立たしさもあったけど自分の親と彼氏が上辺だけでも仲良く食事するシーンにはなんとも言えない気持ちになった。
あたしがトイレに立った間にお母さんが支払いを済ませていた。
戻る時、遠目でお母さんがノンちゃんに何か聞いているのが見えた。
お母さんはアドレス帳に書き込んでいた。
多分ノンちゃんの電話番号を聞いているんだろう。
店を出て駅でノンちゃんとわかれた。
お母さんと2人になってすぐに
「今日は時間作ってくれてありがとうございました」
御礼を言った。
少しは
「おっ」
と思ってくれるかな、なんてよこしまな気持ちがあったんだけどね。
お母さんはそれ以上ノンちゃんの事は何も言わなかったからあたしも言わなかった。
それより何よりあれだけ友達に「大阪で同棲宣言」をしていたのに・・・と、あたしはそっちの方が気になってたわけ。
なんか、かっこ悪いって言うか・・・
帰ってから速攻でノンちゃんに電話した。
ノンちゃんはホテルに着いてて、お互いで今日の感想を話し合った。
「おまえは、おかんにめっちゃ愛されとる」
ノンちゃんがしきりにそう言うから、あたしはお母さんをとてもとても愛おしくなった。
「ノンちゃん、今日はありがとうね」
あたしは今日何度目かになる御礼をまた言った。
電話切ったあと、思い出したんだけど、お店のお会計、お母さんがしたんならノンちゃんに渡した2万返してもらわないと。
まさかパチンコで全額遣われていたなんて思いもしないあたしはそんな事を考えていた。