八百屋の前

私は、足を止め

久しぶりに檸檬を買った

別に意味はない

なぜか、檸檬が欲しかった


窓辺で昼寝をする

子猫を抱き上げたら

突然、私に爪を立てた

「どうして反抗的なの」と叱る


私は平凡な女だ

笑顔を取り戻すため

バラエティ番組をみながら

ビールで暑さを吹き飛ばす

ベランダの洗濯物が風に揺れる


冷蔵庫の檸檬

なぜか、悲しそう

私が腐敗を待っているのを

檸檬は気づいたようだ


檸檬は、私の捕虜

永遠に自由が得られない

檻の中で一生を終える

私はすべての権限を手にした

檸檬は支配者として崇める

by手嶋純