「あなたはいったい誰ですか?」 (第12回)
卒業式の日の朝、5時30分35秒に
100万回をなんとか達成できました。
この瞬間は17年たった今でも鮮明に思い出すことができます。
木戸のレールの上においていた
黄色い目覚まし時計の秒針が35を示していました。
一年間、ただ飛び続けた100時間は
当時の私に何を残してくれたんだろうか?
確かに目標に挑戦してそれを達成した感激はあったけれど
目標を決めてそれへ向かって日々突き進むといった
計画的なものではありませんでした。
ただ、やりたいからやった。
それだけだったように思います。
友だちと一緒に何かをするのは好きだったんだけれど
一人で何かに打ち込むほうが性に合っているようでした。
中学校時代は囲碁・将棋と卓球に明け暮れ
高校時代はブラスバンド一筋でした。
大学に入ってからも軽音楽やテニスなど
いろいろなことをやりましたが一番のめり込んだのは
自転車での旅でした。
大学の4年間で北海道から九州までずいぶん旅をしました。
一番印象に残っているのは、学生時代最後の旅になった
東北・北海道。
行ったのは冬でした。
自宅を出発してフェリー埠頭まで走っていく間
「もしかしたら死ぬかもしれない」
と、自分の中で初めて死を意識しました。
雪道を自転車で走るのです。
すべって転んで後ろから車が来たら・・・
今、冷静に考えれば
よくあんな危ないことをしたものだなあと本当に怖くなります。
幸いにも事故は起きませんでしたが
他人に多大な迷惑をかけるし、家族に悲しい思いをさせること
など全く考えていませんでした。
勝手なものです。
どうしてこんな冬に自転車で東北へいくのか、と聞かれた時
「魂が行きたがっているから」
と答えた記憶があります。
私にとっては、自分さがしの旅だったのです。
旅先ではいろいろな人の暖かさにふれることができました。
十和田湖で出会ったおまわりさんは駐在所へ招き入れてくれて
暖かいお茶をごちそうしてくれました。
そして、私が出発したあともわざわざ追いかけてきて
良心的な民宿を紹介してくれました。
北海道で泊めてくれたお宅では翌朝出発するときに
おむすびまで作ってくれました。
早来駅の駅舎に入ってストーブに暖まりながら食べた
あのおむすびの味は忘れられません。
たった一人で自分さがしの旅をしているつもりだったのは
大きな勘違いでした。
「友情のようのな人間のエモーショナルなつながりの上にこそ、
生命の充足があると信じている。」
まさに、寺山が言っていたとおりでした。
(つづく)