ここ洛陽は、河南省西部、黄河中流に位置し中国七大古都の一つである。

遠く三千年の昔から、九の王朝が都を置いたかつては政治文化経済の中心地。

四大石窟の龍門石窟、名刹白馬寺、三国志英雄の関羽を祀る関林など有名。

中国文明発祥の地の一つであり、中原を抑える要衝の地でもある。

 

話は、封建時代に遡る。地主の横暴、小作の隷属は日本の比ではない。

圧政の巣窟の王朝は、地主の味方である。小作から絞れるだけ絞れと命ずる。

後は好きにせよと、気に入らなかったら売り飛ばせ、見せしめのリンチをと。

 

小作の娘たちは、地主の慰めものになった。嫁だって、夫の筈の子を産む。

乳飲み子を抱えた女は、地主の屋敷に囲われることもあり。滋養の為にである。

我が子に与える大事な乳を、血気の地主は自分のものとばかりに、むしゃぶった。

朝、起き出しては生乳を飲む、喉が渇けばしゃぶりつく、寝るまでそうであった。

いいように扱われた嫁は、夜やっと家へ帰される。やっと我が子に与えられる。

その日々の繰り返しであった。地主と、乳の張った小作の声が……

 

地主 「お前の子は、ワシの子かも知れんある。たっぷり可愛がったある」

   「乳の出を良くしてやる。明日から毎朝来い。子の為にあるだけじゃない」

村の嫁「地主様、もう勘弁してくだされ。子を育てねばなりません。乳だけは」

地主 「おいおい、何を言うね。小麦畑、コーリャン畑がどうなってもいいんか」

   「貸してやらんぞ。よそに出す、それでもいいあるか? 流民になるぞ」

村の嫁「あうっ、せめてお願いがあります。夜になったら、すぐ帰らせてくだされ」

   「それと、赤子の為にみんな搾り取るのは、そこまではしないでくだされ」

地主 「大丈夫ある。ほかにも赤子持ちの女が何人もいるある。お前だけじゃない」

   「乳を飲ませるだけでよい、暴れたりはせん。その為の女はこれまたいる」

   「ええな、わかったな。夫、子、畑を守れ。ワシに乳を与えるだけですむ」

村の嫁「地主様、もしや子が地主様の子かも知れんので、そこんとこは、のう……」

 

この嫁は、あくる日の朝早くから地主の元へと向かった。

地主は地主で、前の日の夜から朝まで、お茶を飲むのを我慢していたのであった。

相当に喉が渇いていた。この分だと、嫁はたまったもんじゃない。お茶にされる。

 

地主 「おお来たか、待ってたある、さっさっ寝床に来い。滋養の為あるね」

村の嫁「全部、飲まないでくだされ、それだけは頼みます……」

地主 「わかったある、わかったある。乳の出を良くしてからじゃ、まかせるある」

村の嫁「来年も、再来年も、いつまでも畑を貸してくだされ。地主様……」

 

 

中国では、古代から若返り思想がある。より若い女を求めて滋養強壮の元とする。

この物語の小作の嫁は、与えるのはそれだけですんだ。せめてもの結びとしたい。