ドヤ中川
待ちに待った鴨会を翌日に控え、すべきことは前夜祭である。年末より毎週のごとく世話をしてくれた気仙沼組をドヤ(実家)に招き入れ盃を交わすのである。ちなみにドヤとは主に日雇い労働者を対象とした簡易宿所のこと。「宿(やど)」の逆さ言葉。
金曜日は仕事にならない、前夜祭、鴨会が楽しみで仕事にならない。だから時間給を使って休むことにした。
10時過ぎ、ひでと、ひろみと合流。一緒にテルメへ。長風呂をして美穂を待つことにした。
美穂のリクエストは手の込んだ料理。手も気持ちも込んだドヤ料理として、ビーフシチューを選んだ。月曜日から毎日ビーフシチュー。練習練習。木曜日に山形牛の黒毛和牛を仕入れコツコツ煮込み、金曜日には納得のいく味になったつもりであった。しかしながら彼女はソレを完食することはなかった。聞くなれば彼女はビーフシチューではなく『ハヤシライス』が好きだったのだ。彼女との付き合いは長いが、そんな「はやし」聞いたことなかったぞ。
日本酒は10種類ほど仕込んだが、抜群に美味いのは上喜元の活性にごりだったな。飲んだ飲んだ!
小関館の罠
翌日、みんなで車へ乗込み東根温泉街の老舗旅館小関館を目指して走る。自由気ままな中国人、スノボきちの2人とは現地で合流することとなった。
ナビに従い辿り着いたその先は廃墟!!!!
ではなく小関館の裏口。B29の襲撃を受けたようなその裏口には、旅館の風貌はなかった。
ようやく表へ辿り着けばそこにはドヤがあった。
ドヤの門をくぐれば、外と変わらぬ冷気、この雪の世界では間違いなく使われないだろう下駄がある。
フロントには人はいない。寒い。しかし玄関には中川様歓迎の文字。恐る恐る呼んでみる。現れたのは元気ハツラツ超丁寧親切??なおばさん。
会計を済ませ、まず案内されたのはお風呂。
夜中と泥酔時は入ってはいけない。危ないから。朝は明るくなったらはいることができるという。そうですか。
そんな適当な説明の後に部屋を案内してもらう。
もちろん部屋には鍵もないが、そこまでロックでもない部屋でもなかった。ルールは部屋の火の元に注意すること。それ以外は自由だ。そんな説明の後もおばさんの話は延々と続くのであった。
奇跡の脱衣所
昨日のヨゴレが残っていた私たちはまず入浴の選択をしたが、トイレに行きたい。
そんな松本が開けた脱衣所の扉の向こうには信じられない世界が待っていた。そこはトイレではなく女性の脱衣所だったのだ!!鍵もないこんな奇跡の扉がある温泉は一体これからどこで出会えるのだろうか、いや出会えないだろう。
脱衣所には奇跡の扇風機もある。古びたソレには、電源が通っており、恐る恐る命を吹き込んだ。
その途端ソレは長年溜め込んだホコリを吹き出した。風呂上がりにもう一度身体を汚して、もう一度風呂上がりの爽快感を味わいたいあなたにオススメの扇風機だ。味わって見てほしい。
いざ新庄へ、絶品最上鴨を堪能
コートを身に纏いながら、誰も履くはずのないハズの下駄を鳴らす男、東根駅とさくらんぼ東根駅を間違い勝手にJRを非難する男と乗り込んだ奥羽本線は40分間我々を揺らし続け目的の新庄へ。切符も買わずに乗車した私たちの乗車駅を新庄駅の駅員は疑うこともなく集金をはじめる。さすが新庄。舟形から乗ったと言ったらいったいどうなったのか。
最上鴨を食べた2時間は20分ほどに感じられる。レバーの旨味、タタキ、ジンギスカン、試作の鴨脂をつかった料理。どれも絶品、呑んで食べてみんな満足できましたか?次は絶対に鴨鍋に行こう!!
足湯とストッキングと下駄
無事東根駅へ到着し、徒歩15分の帰路。
下駄を鳴らして奴は足を痛めた。
冷え切ったその足を暖めるには足湯が必要だった。
しかしその妻はズボンの下にストッキングを履いており足湯に入れない。
その時彼は慣れない手つきでストッキングを破き、笑顔を見せた。その笑顔は恵比寿様を凌駕する渾身の笑顔にいやらしさも付け加えた伝説の笑顔だ。そして、その後ストッキングを三枚買ってあげるという変態ぶりも見せつけた。
365日スノーボードのフェイスマスクをつけて生活してみてはいかがだろう。
その時光景に気づいた下駄が突如暴れ始め、みんな全身びしょ濡れになる。寒すぎる。
さあ、ドヤへ帰ろう。
余談ではあるが、その後下駄は風呂でかけ湯200回という謎の記録を残したという。
その後も日本酒で乾杯、ガブガブ一気飲みする女の横で、サイレントマジョリティを踊る。踊ってる時のマミは本当に楽しそうだ、君は君らしく生きていく自由があるんだよマミ。
気づけば翌朝のサイレントゲロリティーへと物語は続いていく。
つづく。














