発達障害の私にとって「忘れ物をしない」という一般的なスキルは、ものすごく難易度が高い。「また忘れた!」とお財布を取りに自宅へ小走りで戻る私の姿は、通常の動きだ。


 たまに大きくやらかすこともある。お財布をとりに戻って再び駅に到着した私は、お財布を取り出した。しかし、やけに軽い。「おかしいなぁ」と思いつつ恐る恐る、中を見たら……お財布にお金を入れるのを忘れていた! 青ざめる私の目に、緑色と銀色が煌めくSuicaが入り、どっと安堵が押し寄せる。ほっとしたところで、再び気合いを入れる。今日は現金支払いのお店には足を踏み入れてはいけないぞ、としっかり頭に刻む私。ここまでのプロセスが私の通常運転だ。


 忘れ物をしないって、本当に大変なことだ。私は忘れないために、一日のすべてのエネルギーを注いでしまう。ひとつ重要な提出物があると、必ず違うものを忘れてしまう。いつも持ち歩いているはずの眼鏡を忘れたり、スマホを忘れたり、Suicaを忘れたり……


 そうしないために、メインで使うリュックサックを決め、その中身は極力入れ替えないようにしている。外出時に持ち歩くものは、すべてリュックに入れておく。これだけで、忘れ物の頻度はかなり減る。


 たとえば、玄関の鍵をあけたら、ポーチに入れて、リュックにしまう。お財布からレシートを出したら、またリュックにしまう。シンプルかつ最強のやり方だ。


 やむを得ず、いつもとちがう鞄を使った次の日は、念入りにチェックするが、何度確認しても、抜け落ちてしまうものがある。


使うリュックは、ひとつがいい。リュックさえ持ち歩けば、忘れ物がないようにセッティングしておこう。


これが、私のライフハックのひとつ。


津谷てる子