名作と言えるのか、最近観た映画の話です。
名作と言えるのかと書いたのは、
アカデミー賞にノミネートもされていない映画だからです。
実話に基づいたホワイトハウスの黒人執事の話。
黒人差別の激しかったアメリカ南部の綿花農場で、
農場主に母親はレイプされ、父親は殺されてという、
典型的な黒人差別の、事件にならない事件を幼いころに経験し、
給仕という職をスタートに、
ホワイトハウスの執事を34年務めた黒人男性の物語です。
7人の大統領に仕えた執事で、
見ざる聞かざる言わざるが必須の生き方をしてきた方でしょう。
ローラパークスがバスの白人席を譲らなかった事件も、
キング牧師が暗殺されたのも、
マンデラが釈放されたことも、
見てきても、感想は言わず、表情にも出さず、
彼は、黙々と執事として働いてこられたのでしょう。
息子は、公民権運動に参加し、
それでも彼は、息子を認めずという姿勢でした。
そんな彼でしたが、ホワイトハウスを辞することに決め、
息子が先導する公民権運動のデモに参加し、
息子と共に逮捕されて留置場に入ることに。
彼は、息子に、晴れ晴れとした気持ちでいること、
そして、いままで理解しなかったことを詫びるのでした。
オバマさんが大統領になって、彼はホワイトハウスに招待されます。
彼の幼かった頃、その後、横目で見てきた公民権運動、
全てをひっくり返したように、黒人の大統領の誕生。
わずか100年未満の、アメリカの歴史認証映画のように思いながら、
感動と言うと、軽すぎるような、少し重たい映画でした。
アカデミー賞にノミネートもされなかったのは、
実は、まだまだ白人社会のアメリカがあって、
たぶん、注目や喝采を送りたくない映画だからなのでしょう。
暗部は伏せておきたいもの。
認めたフリをしていても、です。