抗がん剤治療を強制終了し、約一ヶ月。私は家でゴロゴロしながら、気力と体力の回復を待っていました。1カ月を過ぎる頃、体からスーッと「薬が抜けていく」感じがしました。ようやく私の日常が戻り始め「新年度には職場復帰!!」と決めました。
12月のクリスマス前、買物に行こうと運転していた時のこと。ハンドルを握る左手が「ストン!」と滑り落ちました。「いねむりしたかな?注意力が落ちたかな?」と気合を入れて左手をもとに戻しましたが、また「ストン!」
「変だな」と思いながら買い物を済ませ、帰宅。夫の手を握り、握力確認。左が少し弱いような気がするが「変らないよ…」と夫。「そうかなあ…」家事で気を紛らわせながら様子をみ、再度確認。「やはり左の力の入りが悪い。」頭の小さな血管が詰まったか?出血か?? 迷いながら休日外来を受診したが「緊急性はない」との判断。翌日のMRI検査を予約し帰宅しました。
翌日、頭のMRI画像を持ち肺がんの主治医を受診。
診察室に入るや否や主治医が言った。
「脳転移だね~~~。2か所かな~~。肺がんは、脳転移しやすいんだよ~~。ぼく言ってたよね~。明日、専門のクリニック受診してください。紹介状書くから、持って行ってね~。だいじょうぶだよ~。でも早かったね~~」
「私の人生ここまでか…」「終わったな……」「あとどのくらいかな…」
帰路、運転しながら考えた。
「子どもに何て言う?なるべく淡々とだよね~。いや!待て!!明日の受診結果が出てから、今後のことまでまとめて話そう!!…ショックは1回でいいよね…」
「でも子供、大丈夫かな…。ちゃんと大人になれるかな…」「いやいや、今考えてもしょうがない!… 明日の結果で考えよう!…ウン!そうしよう!!」
「じゃあ、とりあえずどうする? なにする?…」「脳転移って進行早いよね‥‥‥身辺整理かな…。自分で考えられて、動けるうちに…」
その夜家族が寝静まるのを待ち「それまで捨てられなかったもの。子どもに見せられないもの、渡せないもの。あの世に持っていけないもの・・・」を10枚の大きなごみ袋詰め込みました。
朝、起きてきた夫に「ごみ捨てておいて。今日収集日だから。ヨロシク!!」と言い放ち、いつものように朝食作りを始めました。
10袋のごみを呆然と見つめる夫。何も聞かずごみ収集場所まで、何度も大きなごみ袋を運んでくれました。(恩着せがましい「大きなため息」をつきながら…)
いつものようにみんなを送り出し、私も「いざ!!出陣!!」…
(つづく・・・)