こんばんは。星空

 



早速ですが、考えてみたいと思います。

 



第61回試験・一般知識

(a)

まず、「一般気象学」p166の図7.1、「地球が吸収する太陽放射量と地球から出ていく放射量の緯度分布」を見ながら考えてみます。一般知識の「大気における放射」では、地球が受け取る太陽放射量と地球放射量は釣り合っている、という「放射平衡」について学習しますが、これはあくまで地球全体で考えた場合で、実際に緯度別で考えますと放射平衡は成立していません。概ね低緯度では地球放射よりも太陽放射の方が大きく、高緯度では太陽放射よりも地球放射の方が大きいのですが、これを解消するために低緯度から高緯度へ熱の輸送が行われています。その様子を表わしているのが問題の図になります。


この図は「一般気象学」p167の図7.2、「年平均で見た大気と海洋の系における熱の南北輸送量の緯度分布」から引用されていますが、図のグラフのうち、実線の「大気と海洋の全熱輸送量」と、縦軸の「北向きの熱輸送」の見方としましては、正が北向き、負は南向きの輸送の輸送を示しており、これらに着目しますと、北半球では、北緯40°付近において大気と海洋の全熱輸送量がピークの5×1022kJ/sになっていて、ここから高緯度ではそれが例えば北緯50°が4.5×1022kJ/s、北緯60°が3×1022kJ/sと減少していることがわかります。

 

これがつまり高緯度の大気を加熱しているのか、冷却しているのか、北緯50°~北緯60°の緯度帯で考えたときに、南から北緯50°から4.5×1022kJ/sの熱が入ってきて、北緯60°から3×1022kJ/sの熱が出ていき、差し引き1.5×1022kJ/sの熱がこの緯度帯に留まると考えることができます。

 

したがって大気と海洋は全体として南北輸送量により加熱されていると考えられますので本文の内容は正しいとなります。

 

(b)

水蒸気とありますので、凝結による潜熱の放出、あるいは蒸発による潜熱の吸収が大きく関係します。そこで図の点線、「大気による潜熱輸送」に着目しますと、亜熱帯高圧帯において、北緯20°付近から北側では大気による潜熱輸送が北向きに運ばれており、一方南緯20°付近より南側では、大気による潜熱輸送が南向きになっていることがわかります。このことはすなわち、降水量よりも主に海洋からの蒸発量が多いために、その水蒸気が熱帯収束帯だけでなく中緯度帯との両方に向かって運ばれていることを意味しています。

 

したがって、本文の内容は誤りとなります。

 

(c)

最後に、図の一点鎖線で示されている「海洋による熱輸送」に着目しながら考えてみます。先ほどの「一般気象学」図7.1で見られる両放射量の不均衡による温度差を解消するために、熱輸送が起こるのですが、このことは低緯度からの高温の海水と高緯度からの低温の海水とが互いにそれぞれの熱輸送の効果を打ち消していると考えるのではなく、本文にあります通り、「低緯度から高緯度に熱が輸送されている」と考えます。したがって、本文の内容は正しいとなります。


よって、正解は③ということになります。

 

では。バイバイ

 

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