こんばんは。流れ星

 



早速ですが、考えてみたいと思います。

 

 

第61回試験・専門知識


まず、初めに、アンサンブル予報の概要について触れておきたいと思います。

 

数値予報の計算における数値予報モデルの初期値は客観解析から作成されていますが、この初期値には、観測誤差などの影響でわずかな誤差が含まれています。このため、仮に数値予報モデルが完全なものであるとしても、その初期値に含まれるわずかな誤差が時間とともに増大し予測結果に大きく影響してしまいます。この結果、総観スケール現象の予測可能な時間は2週間程度といわれており、予報には限界があることになるわけです。このように一つの初期値で一つの予報値を求める手法を「決定論的予報」といいます。

 

気象庁ではこのことを考慮して、初期値(コントロールラン)に微小な誤差を持たせた多数の初期値(摂動を加えた少しずつ異なる多数の初期値→摂動ラン)を与えて計算することにより、個々の予報値を求めています。これらの予報値のことを「メンバー」とよんでいます。このメンバーから初期値の誤差の拡大を把握したうえ、計算結果を統計的に処理し、最も起こりやすい気象状態を予測しています。このような手法で行う予報を「アンサンブル予報」とよんでいます。

 

(a)

(気象庁HP:令和5年度数値予報解説資料集 p85 より)

 

アンサンブル平均とは、各メンバーの予報値を足し合わせて平均を取った値のことをいいます。したがって、本文にありますように、降水などの気象要素の分布が平滑化されることになりますので、実際に現れる気象要素の極値などが表現されるとは限らないため、個々のメンバーの予想にも留意する必要があり、下線部は正しいとなります。

 

(b)

数値予報モデルが持つ偏ったところで発生する誤差のことを「系統的誤差」といいます。また、日々の数値予報の初期値に含まれるわずかな誤差が拡大するなどで生じる時間的・空間的な誤差を「ランダム誤差」とよんでいます。

 

本文にありますように、数値予報モデルが持つランダム誤差は予報結果のアンサンブル平均を取ることで低減することができますが、メンバーのすべてが同じ系統的誤差を含む数値予報モデルから出力されますと、これらのアンサンブル平均を取ることによっても系統的誤差は除去することはできません。系統的誤差を低減できるのは天気予報ガイダンスですので混同しないように注意しましょう。したがって、下線部の内容は正しいとなります。

 

(c)

メソアンサンブル予報(MEPS)につきましても概要に触れておきますと、メソアンサンブル予報はメソモデル(MSM)の予測に対して信頼度や不確実性などの情報を付加することを目的に運用されているシステムです。水平方向の格子点間隔は5km、鉛直方向の格子点間隔は76層で、予測の実行頻度は1日4回(00時、06時、12時、18時UTC)で39時間先まで予測が行われます。

(気象庁HP:気象庁予報部数値予報課 「メソアンサンブル予報の紹介」2019.3.13 気象・地震等の情報を扱う事業者等を対象とした講習会(第6回)資料p24 より)

 

大雨や暴風などのはげ激しい気象現象が発生する可能性について、メソモデル(MSM)では予測結果が一つですので把握が難しいですが、メソアンサンブル予報(MEPS)ではメンバーが21ありますので21通りの予測結果が得られることになります。したがって、メンバーのうち、メソモデルでは把握できなかった予測結果を示しているメンバーがあれば、激しい気象現象が発生する可能性を早い段階で把握することができるようになる場合があります。

 

したがって、下線部の内容は正しいとなります。

 

(d)

アンサンブル予報における各メンバーの予報値のバラつき具合を「スプレッド」とよんでいます。

 

(気象庁HP: 令和5年度数値予報解説資料集p86 より)

 

スプレッドが大きいときは初期値のわずかな違いで予報の結果が大きく異なってしまうことを意味しますので予報の信頼度が低いと判断されます。また逆に、スプレッドが小さいときは予報の信頼度が高いと判断されます。

 

したがって、下線部の内容は誤りということになります。

 

よって、正解は(d)のみ誤りで④ということになります。

 

では。バイバイ

 

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