こんばんは。
第60回試験・実技試験2・問3
今回は、図11の名瀬における状態曲線と風の鉛直分布を用いて、①では、図に見られる2つの前線性逆転層のそれぞれについて、逆転層の上端の高度およびその高度の上層50hPaから下層50hPaの範囲における温度移流の種類を、②では、750hPa〜550hPa、および550hPa〜450hPaにおける温度移流の状況について、温度移流が明確な場合はその方向を示して簡潔に答えよ、という内容の問題を2問まとめて考えてみます。
①
まず、今回の「前線性逆転層」について、一般知識のおさらいで簡単に振り返ってみたいと思います。
前線性逆転層とは、上図に示しましたように、前線面において形成される逆転層のことをいいます。寒気の上空に暖気が流れこんできますと、寒気と暖気が接するところ(図の緑色の部分・このような気層のことを遷移層とよんでいます。)で、気温の逆転が生じ、逆転層が形成されます。移流性逆転層ともいいます。
これを踏まえて、図11の名瀬における状態曲線(エマグラム)を見てみますと逆転層が4ヶ所あって、このうち、逆転層の層間において、寒気移流か暖気移流のいずれかの温度移流が見られる2ヶ所の逆転層を見つけてみます。
問題文の冒頭で、「全層にわたり温度風の関係が成立するものとする。」とありますが、これはすなわち、温度移流についての判断は、エマグラムの右側にある風の鉛直分布より、逆転層を挟む2つの層間において上空に向かって風向が時計回りを示す場合は「暖気移流」、反時計回りを示す場合は「寒気移流」と判断してよいことを意味しています。
したがって、4ケ所の逆転層のうち、温度移流が明確な箇所は、2つの層間で上空に向かって時計回りを示し、暖気移流が見られる900hPaに上端がある逆転層と、反時計回りを示し、寒気移流が見られる350hPaに上端がある逆転層の2ケ所であることがわかります。
よって、
下の逆転層 高度:900hPa 移流の種類:暖気移流
上の逆転層 高度:350hPa 移流の種類:寒気移流
となります。
②
次に、750hPa~550hPa、および550hPa~450hPaにおける温度移流の状況について見てみます。750hPa~550hPaにつきましては750hPa~550hPaの全層にわたり風向が南南西と変化がなく、温度移流はほとんどないと判断されます。また、550hPa~450hPaにつきましては、風向が下層の南南西から上層の北西へと時計回りに変化しており、暖気移流が見られると判断され、平均的に東向きの風(西風)であることから、東に暖気が移流していることがわかります。したがって、
750hPa~550hPa:温度移流はほとんどない。
550hPa~450hPa:東に暖気が移流している。
ということになります。
では。