こんばんは。三日月

 

 

早速ですが、考えてみたいと思います。

 

 

第56回試験・一般知識

今回は、大気の熱力学から、ある空気塊の飽和水蒸気圧と飽和混合比を基準として、(a)、(b)、(c)の気温や気圧の異なる空気塊との大小関係を問う内容の問題です。早速(a)から見ていきたいと思います。

 

(a)

水蒸気圧とは、空気中に含まれている「水蒸気の分圧」のことをいいます。すなわち、気圧=乾燥空気の分圧+水蒸気圧、と考えることができます。この空気中に含まれる水蒸気なんですが、実は上限があり、上限まで空気中に水蒸気が存在していることを「飽和」の状態といいます。したがって、飽和しているときの水蒸気圧のことを「飽和水蒸気圧」とよんでいます。

 

上図はその飽和水蒸気圧の値について模式的にグラフで表したものです。このグラフからわかることは、飽和水蒸気圧の値は温度が高温になるにつれて空気中に多くの水蒸気を含むことができることです。すなわち飽和水蒸気圧は温度によってのみ決定されることを示しています。なお、飽和水蒸気圧の値の温度依存性につきましては「一般気象学」p59に載っていますので参考にしてみてください。

 

したがって本文のように気圧が800hPaと、基準としている空気塊の気圧(850hPa)より低くても、気温は5℃と同じであるならば、空気塊の飽和水蒸気圧Aと等しいですので本文の内容は誤りということになります。

 

(b)

混合比とは、ある空気塊において、水蒸気の質量(g) / 乾燥空気の質量(kg) で表されます。(a)との関連になりますが、空気塊の温度が高くなるにつれて空気塊に多くの水蒸気を含むことができることから、飽和水蒸気圧と同様に温度が高いほど、すなわち温度が5℃の基準としている空気塊の飽和混合比Bよりも、同じ気圧(850hPa)で温度が10℃の空気塊の方が飽和混合比が大きくなります。

 

したがって、本文の内容は正しいということになります。

 

(c)

(エマグラム:第17回試験・一般知識・問5 より)

 

最後に、温度が同じで、基準としている空気塊の気圧(850hPa)よりも高い気圧(900hPa)の空気塊と比べた場合、どちらが飽和混合比が大きいか、ということです。

 

ある混合比の値をもつ空気塊がどこで飽和するのかにつきましては、上図のエマグラムを使って考えてみます。エマグラムには3種類の線が描かれています。太実線で傾きの大きい線が「乾燥断熱線」、点線で少しカーブして描かれている線が「湿潤断熱線」、そして細実線で傾きの小さい線が今回着目する「等飽和混合比線」で、この線が「ある混合比の値をもつ空気塊が気圧の変化によって何℃で飽和するのか」を表わした線になります。

 

例えば、飽和混合比が10g/kgの場合を見てみますと、1000hPaでは約14℃、900hPaでは約13℃、850hPaでは約11℃、というように、同じ飽和混合比ならば、気圧が低くなるにつれて、温度も低くなることがわかります。

 

 

では、問題のように温度が同じであればどうか、温度5℃で見てみます。わかりにくいので拡大したイメージを手書きで描いてみましたが、900hPaにおける5℃の飽和混合比の値が約6g/kgであるのに対して850hPaにおける5℃の飽和混合比Bの値は約6.5g/kgで、比較しますと900hPaの空気塊の方が飽和混合比が小さいことがわかります。

 

したがって、気圧900hPa、温度5℃の空気塊の飽和混合比はBよりも小さいですので、本文の内容は誤りということになります。

 

よって、正解は、(b)のみ正しく、④ということになります。

 

では。バイバイ