こんばんは。新月

 

 

早速ですが、考えてみたいと思います。

 

 

第55回試験・専門知識

(a)

まず、図Aに着目しますと、本文では、「太平洋赤道域中部は外向き長波放射量OLRが正偏差で対流が不活発、インドネシア周辺はOLRが負偏差で対流が活発となっており、」とあります。

 

外向き長波放射量(OLR: Outgoing Longwave Radiation)とは地球の大気上端から宇宙空間へ出ていく長波放射のことをいいます。学習がまだの方は「一般気象学」p128の図5.17を見ますとわかりやすいと思います。

 

このOLRは、気象衛星で観測されているわけですが、対流が活発な領域では、ここで発生する対流雲の雲頂高度が高くなるほど雲頂温度が低くなるため気象衛星が捉えるOLRは小さくなりこの場合を負偏差としています。逆に対流が不活発な領域、すなわち晴天域ではOLR大きくなり、この場合を正偏差としています。そこで図Aではどのように表現されているか見てみますと、青くなるほど負偏差が大きくなり対流が活発な領域であることを表わしています。逆に赤くなるほど正偏差が大きくなり対流が不活発な領域であることを表わしています。

 

そこで図Aのインドネシア周辺に着目しますとOLRが負偏差で対流が活発であることがわかります。下線部では「エルニーニョ現象時の特徴がみられている。」とありますが、「一般気象学」p287の図10.16でもわかりますように、インドネシア周辺で対流が活発なのは「ラニーニャ現象時」の特徴になります。

 

したがって、下線部の内容は誤りということになります。

 

(b)

本文の続きを読んでみます。「図AのOLRの分布に対応して、図Bでは、200hPaの大気の流れはインドシナ半島から中国付近で高気圧性循環の偏差となっており、、日本付近から日本の東海上で低気圧性循環の偏差となっている。」とあります。図Bの見方としましては、インドシナ半島や中国付近が特に赤色が濃いことから、平年差の赤色が濃いほど高気圧性循環の偏差が大きく、逆に南西諸島を除く日本付近から日本の東海上では青色が濃いことから、平年差の青色が濃いほど低気圧性循環の偏差が大きいことがわかります。この図Bにおいては亜熱帯ジェット気流の流れがどうなっているかを見るのですが、日本付近が低気圧性循環に偏差が大きいことから南に蛇行していることがわかり、これも「ラニーニャ現象時」の特徴になります。

 

したがって、「北に大きく蛇行」となっている下線部の内容は誤りということになります。

 

(c)

最後に図Cを見ながら本文を読んでみますと、「図Cでは、500hPa高度がシベリア北部で正偏差、日本付近で負偏差となっている。」とあります。「このシベリア北部で正偏差」とは何かといいますと、500hPaの等圧面高度が平年値より高いことから、シベリア北部では高温傾向であること読み取ることができます。逆に「日本付近が負偏差」とは何かといいますと平年値より500hPaの等圧面高度が低いことから日本付近では低温傾向であることが読み取れます。

 

先ほどの(b)と関連しながら大気の流れを考えますと、下線部にあります通り、「日本付近が負偏差」なのは寒帯前線ジェット気流の蛇行により日本付近に寒気が南下しやすいことを示すと考えられます。

 

したがって、下線部の内容は正しいということになります。

 

よって正解は、(c)のみ正しく、⑤ということになります。

 

以上で第55回試験の学科試験はすべて終了となります。次回からは引き続き、第55回試験・実技1の問題を考えていきたいと思います。

 

では。バイバイ