こんばんは。お月様

 

 

早速ですが、考えてみたいと思います。

 

 

第54回試験・実技1・問3

今回は、図8(上)に基づいて図1の初期時刻の日本付近にあるこの前線が、12時間後にどういう予想位置になるかを図7(上)の地上予想図の枠で囲った範囲内に解析せよ、という問題です。

 

 

まずはじめに、12時間後の地上において予想される前線の位置を解析するには、図8(上)の850hPa面における前線の位置を解析してみる必要があります。その理由は後ほど述べることにします。今回の850hPa面における前線解析において着目すべき重要な要素は、等温線の分布における集中帯の暖気側の縁と、風のシアー、特に風向のシアーの2点です。そこで等温線集中帯の暖気側の縁を低気圧の中心以西は12℃、以東は9℃の等温線でなおかつ、前線を挟んで暖気側を南成分、寒気側を北成分となるようにして解析します。また、低気圧の中心付近について、初期時刻では中心気圧が1018hPa、12時間後の予想では1012hPaと発達すること、低気圧の中心付近で等温線が極側に屈曲していることから、初期時刻に既にみられるキンク(前線の波動)は12時間後においても存在していると考えられます。したがって若干の個人差はあるかもしれませんが850hPaの前線の位置は概ね青線で示した上図のようになります。

 

次に、先ほど解析した850hPaの前線を図7(上)の地上12時間予想図に重ねてみました。僕が受験時代に実技の勉強を始めたころ、「わざわざ850hPa面の前線を解析しなくても地上の等圧線の気圧の谷だけで前線が引けるのではないか?」という疑問を持ったものです。

 

ところが、前線の構造を考えますと、地上の前線は、概ねですが850hPa面の前線より温暖前線で緯度2°程度、寒冷前線で緯度1°程度、暖気側に位置しているはずです。今回は停滞前線ですが、概ね緯度1°~2°程度暖気側にあると考えられます。このことを考慮に入れずに等圧線の気圧の谷だけで解析してしまいますと、この850hPa面の前線よりも寒気側になって不整合が生じることがあり、また前線以外の要因で気圧の谷が形成されることがありますので、850hPa面の前線の位置を知ることは重要な作業となるわけです。

 

 

このことを踏まえて、12時間後の地上に予想される前線の位置を解析します。850hPa面の前線の少し暖気側で、風向シアーにおいて前線を挟んで南側で南成分、北側で北成分になっていること、予想降水域が見られる最も南縁付近、南西諸島付近に見られるLマークとつなげる、といった要素を総合して解析してみますと、概ね赤線で示した位置が12時間後に予想される地上の前線になります。

 

 

解答は、前線記号を用いず実線で記入すること、前線は枠の部分まで延びていること、の2点の指示に従って描きますと、概ねこのようになるかと思います。

 

(気象業務支援センター解答例)

 

なお気象業務支援センター解答例はこのようになります。最初は時間がかかっても構いませんので、学科試験で学習する前線の構造を思い出しながら描いてみて、解答例と比べて大きく違うようであれば、おかしいところがないか等を考えながら練習を重ねますと、注意すべき点が身につき、自ずと早く描けるようになります。是非当問の他、いろんなパターンを用いて練習してみることをおすすめします。

 

では。バイバイ