こんばんは。星空

 

 

早速ですが、考えてみたいと思います。

 

 

第42回試験。専門知識

数値予報では、格子間隔より小さいスケール(サブグリッドスケール)の現象は直接取り扱うことはできません。このため、格子間隔より小さいスケールの現象による効果を見積り、格子点値で表現することを「パラメタリゼーション」とよんでいます。

 

今回の設問では、一覧に挙げられている数値予報の物理過程で用いられているパラメタリゼーションの中から、「雲のない晴天時に地上の気温が上昇する過程の計算するために用いられているもの」をすべて選択し、それらの識別番号の和を解答せよ、というものです。

 

大規模な地球大気の運動では、流体力学の式などによって表現されますが、地球の大気の状態は、太陽放射や地球放射、水の相変化、大気と地表面との間の熱交換などの過程によっても変化します。数値予報モデルにおけるモデル大気を実際の大気の状態に近づけるためには、こうした過程も表わす必要があります。このような過程を「物理過程」とよんでいます。それでは各パラメタリゼーションについて順に検討してみることにします。

 

☆放射過程(長波)・放射過程(短波)

長波は地球放射の放出や吸収される熱量を見積もることを指します。「雲のない晴天時」では、地表面や大気から放出される熱量、また地表面から放出されて大気が吸収し熱量が主な要素です。また短波は太陽放射により地表面に届く熱量を見積もることを指します。「雲のない晴天時」では、太陽放射により直接地表面に届く熱量のほかエーロゾルによる太陽放射の散乱・吸収の効果も見積もられます。

したがって、地上の気温の上昇には、この効果を見積もる必要があると判断されます。
 

☆積雲対流過程

積乱雲の発生による現象は、単体では数百mから数kmの小さな現象のため、現在の数値予報では直接表現することはできません。しかし、積乱雲を発生させるための対流活動において、下層にある熱量を上層に輸送するという役割があり、これが複数集まりますと、大きなスケールの現象に影響を及ぼすことになります。ただし、「雲のない晴天時」では、この過程は用いられないことになります。

 

☆地表面過程

地球の表面には、陸地、海洋、さらに細かく見ると砂漠、草原、雪原、海氷など様々な状態の違いがありますので、大規模な大気の運動に大きく影響を与えます。地表面に届く太陽放射エネルギーは陸地と海洋では吸収や反射するエネルギー量が異なり、雪原や海氷では太陽放射をよく反射するため地上の気温の上昇は小さくなります。したがって、地上の気温の上昇には、この効果を見積もる必要があると判断されます。

 

☆重力波抵抗

重力波抵抗は、山岳波抵抗ともよばれます。格子間隔よりも小さい地形によって引き起こされる重力波の効果を表しています。格子間隔より小さく、地形の粗度が大きいところで重力波が起こるようになっており、山岳が大気の運動の摩擦による影響を及ぼしていることを表します。ただし、重力波抵抗は地上の気温が上昇する過程において直接の効果はないと判断できます。

☆境界層乱流
地表面付近において、高度500mから2kmの厚さで乱流、すなわち地表の粗度の大きさや熱の影響によって大気に小さな渦や乱れが卓越する気層を大気境界層とよんでいます。大気境界層では、この乱流によって熱、水蒸気、運動量(「質量×速度」で表される運動の勢いを表す量)が輸送され、地表面と大気境界層の上にある自由大気との間でやり取りを行なっています。したがって、地上の気温が上昇する過程においてこの効果を見積もる必要があると判断されます。

☆大気潮汐
大気においては太陽による大気の加熱による気圧の周期変化や、月の引力による周期変化が起こっており、これを大気潮汐とよんでいます。赤道付近や低緯度では大気潮汐により数hPa程度の気圧変動がありますが、中緯度では温帯低気圧や移動性高気圧などによってその影響は小さくなります。ただし、地上の気温が上昇する過程において直接の効果はないと判断されます。

したがって、地上の気温が上昇する過程において計算に用いられるパラメタリゼーションは、

放射過程(長波)1+放射過程(短波)2+地表面過程8+境界層乱流32=43

よって正解は③ということになります。

では。バイバイ