こんばんは。満月

 

 

早速ですが、考えてみたいと思います。

 

 

第52回試験・専門知識

(a)

全球モデル(GSM)とメソモデル(MSM)の降水予測結果が異なる要因として、水平格子間隔の違いによる、地形性降水の違いや、データ同化に用いられる観測データの違いが挙げられるところまでは正しいのですが、今回の問題ではその後の、「積雲対流過程などの物理過程の違い」が2つのモデルの予測結果の違いに影響するかどうかというところで、これまでのパラメタリゼーションに関する過去問題よりも踏み込んだ内容となっていて難しかったのではないかと思います。

 

(気象庁HP 数値予報解説資料(数値予報研修テキスト)第 II 部 数値予報の基礎知識 第4章 数値予報モデル p29 より)

 

数値予報では、モデルの時間・空間能以下の(サブグリッドスケール)現象が格子点値に影響する効果を見積もって格子点値に反映させ、予報精度を高める作業を行います。この手法のことをパラメタリゼーションとよんでいます。

 

前回の専門知識・問4でも触れましたが、放射や水の相変化、乱流といった物理過程はこのサブグリッドスケールの現象で、格子点に直接表現することはできません。しかし、かと言ってこうした現象を無視しますと適切な予報はできなくなります。格子間隔内の現象がどの程度なのか見積もることによって格子点値に反映させる作業を行う必要が出てきます。これがパラメタリゼーションということになります。

 

これを踏まえて問題を考えてみますと、問題での積雲対流過程は、水の凝結を伴う対流ですので水の相変化による格子点値への影響を見積もることになりますが、実はモデルによって積雲対流過程のパラメタリゼーションの手法が異なっています。

 

(気象庁HP 数値予報解説資料(数値予報研修テキスト)第 II 部 数値予報の基礎知識 第4章 数値予報モデル p31 より)

 

一つは、ケインフリッチスキームとよばれる手法で、格子内の積雲の効果を代表的なひとつの積雲で代表させている手法で、メソモデル(MSM)で用いられています。

 

(気象庁HP 数値予報解説資料(数値予報研修テキスト)第 II 部 数値予報の基礎知識 第4章 数値予報モデル p31 より)

 

もう一つは、荒川 シューバートスキームとよばれる手法で、複数の積雲を個別に扱う手法で、全球モデル(GSM)で用いられています。

 

《参考文献: 気象庁予報部 平成30年度数値予報研修テキスト (一財)気象業務支援センター 2018》

 

このように、全球モデルとメソモデルとで積雲対流過程を扱うパラメタリゼーションの手法には違いがあり、それによって異なる降水予測結果をもたらす要因となる割合がある程度生じることが考えられます。したがって、「非常に小さい」とはいえないと判断されます。本文の内容は誤りということになります。

 

(b)

メソモデルの予報領域は日本周辺に限られています。そのため、領域外の情報、すなわち側面境界の情報は全球モデルの予測結果を用いています。

 

したがって、全球モデルに予測誤差がある場合は、メソモデルの予測はその誤差の影響を受けることになります。本文の内容は正しいということになります。

 

(c)

水平スケールが鉛直スケールに比べて大きい総観規模現象を扱う全球モデルでは静力学平衡の近似を用いて表現されます。しかし、この場合は鉛直方向に運動方程式を立てて鉛直p速度の大きさを求めることはできません。そのため、本文にあります通り、水平方向の運動方程式と連続の式を用いて鉛直p速度を求めています。

 

したがって、本文の内容は正しいということになります。

 

よって、正解は、(a)以外正しく、③ということになります。

 

では。バイバイ