こんばんは。
早速ですが考えてみたいと思います。
まず、比湿について確認しましょう。大気の熱力学におきましては用語がたくさん出てきますのでそこが結構難しいところなんですが、比湿とは、水蒸気と水蒸気を含んだ状態の空気との質量比、言い換えますと、水蒸気と空気全体との質量比のことをいいます。すなわち、
比湿=水蒸気の質量(g)/空気全体の質量(kg)
ということです。
これとよく比較されるのは混合比です。混合比とは、水蒸気の質量と空気全体から水蒸気を除いた乾燥空気との質量比のことをいいます。すなわち、
混合比=水蒸気の質量(g)/乾燥空気の質量(kg)
ということです。なお、問題では比湿の単位が「kg/kg」となっていますが、一般的には「g/kg」と表されることも多いです。といいますのも、例えば、今日の大阪の予想最高気温28℃とします。このときの飽和水蒸気圧は「一般気象学」p59によりますと37.78hPa、つまり飽和している状態でも1000hPaの空気全体に対して水蒸気が占める割合は約4%弱程度というところからも理解しやすいかと思います。
次に円柱側面の単位面積あたりに流入する水蒸気量を考えます。
水蒸気を含む空気が風速v(m/s)で流入してその空気密度がρ(kg/㎥)としますと、1秒間の単位面積あたりに流入する空気量が求まります。すなわち、
ρ(kg/㎥)× v(m/s)=ρv(kg/㎡s)ということになります。
(a)の考察の着地点は水蒸気量を求めることですので、ここではじめに確認した比湿の概念を用います。つまり求めた空気量に比湿を掛けることによってその単位面積あたりに流入する水蒸気量を求めることができます。すなわち、
ρv(kg/㎡s)× q(kg/kg)= ρqv(kg/㎡s)
ということになり、選択肢はこの時点で④か⑤に絞られることになります。
いよいよこの模式図における円柱底面での平均の降水強度がどれだけになるかを考えます。
先ほど求めた単位面積あたりに流入する水蒸気量に円柱側面の面積を掛けますと1秒間に円柱内へ流入する水蒸気量が求まります。この問題では既に円柱の側面積を2πrH(㎡)と書いてくれていますが、円柱の側面を展開しますと長辺の長さは円周の長さのことですので2πr、短辺の長さは高さのHですのでこれらを掛け合わせたものです。したがって2πrHρqvということになります。
一方、円柱底面での平均の降水強度をP(mm/h)とすると、円柱底面全体に降る水の量はπr2P/3600(kg/s)と与えられています。問題の冒頭で「そのすべてが円柱底面への降水となるものとする。」とあることから、2πrHρqv=πr2P/3600と等式にすることができますので、あとは与えられた値を代入して計算することになります。
2πrHρqv=πr2P/3600
7200πrHρqv=πr2P (両辺に3600を掛ける)
7200Hρqv=rP (両辺のπrが消える)
7200Hρqv/r=P (両辺をrで割ってPの式にする)
7200×1000×1×2×10-2×2/7200=P (与えられた値を代入する)
40=P
よって(b)は40が入り、正解は⑤ということになります。
なお、類似問題として、古い問題になりますが、第3回試験・一般知識・問4があります。
お持ちの方はチャレンジしてみてください。
では。