久しぶりにニュートンを買ったんです。
ご存じ科学を一般にわかりやすく解説する雑誌。
2月号の特集が「科学の名著」だったもので、これは買わねばと。
そして、この号で紹介されていた中から、一冊買いました。
それが――
『時間は存在しない』という本。
著者は、ループ量子重力理論を提唱したカルロ・ロヴェッリ氏です。
さっそく読んでみると……
あ、う、あ、うううう……
む、難しい（汗）。
難しすぎて一気に読めないので、コワーキングでも執筆の合間に読み進めました……
がっ！
最後のページに到達してもまだ、ぼくはロヴェッリ氏の説く時間について理解できませんでした。
以前、リチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」を読んだときは、修飾の多さと、冗長すぎる文章に翻弄されのですが、ロヴェッリ氏の文章に「難しさ」はありません。
なのに理解するのがとても難しい。
ぼくの足りない頭でなんとか整理してみると――
われわれが時間と認識する「出来事」には熱がかかわっていて、エネルギーが熱に変わって平衡になる過程を「熱時間」と呼び、それ以外に時間のかかわる物理法則は存在しないのです。
このことをエントロピーと呼ぶことにしましょう。過去の宇宙はエントロピーの低い状態にあり、いまはエントロピーが増大し続けています。
そう考えると「時間の矢」が未来にしか飛ばず、決して過去に戻らないのも理解はできます。なぜならエントロピーは決して減少しないから。
完全に平衡な系と、熱のかかわらない力学的な法則に「時間」は存在しないのです。
ですが、エントロピーが増えるとき痕跡を残すことがあります。たとえば月のクレーターは、過去に隕石が月に落ちて、膨大な熱に変わった跡です。ぼくらがペンで文章を書くのも、ペン先が紙との摩擦でわずかな熱に変わった跡です。
ぼくらの「記憶」もエントロピーが増大するときの痕跡といえます。具体的には脳細胞のシナプスとかニューロンとかいろいろ複雑なことが起こっているのだけど、元を正せばそれらにはエネルギーが使われ、そのエネルギーが熱になって「記憶」が痕跡として残るのです。
脳はその記憶を元に、未来を予測できます。なにか原因があって、その結果なにが起こるかわかるのです。たとえば土に種をまけば芽が出て作物が育つと予測できるから、ぼくらは農業をすることができます。
過去は過ぎ去り、未来はまだ来ていない。ぼくらは常に「現在」にしか生きていないのに、記憶が過去を留め、その記憶が未来を予測している。
つまり、ぼくらは常に「時」を脳の中で刻むように進化してきた生物なのです。だからこそ時間に魅せられ、時間とはなにかと考察せずにはいられない。
でも最初に書いたとおり、時間のかかわる物理法則は熱力学だけ。それもエントロピーが増大するときだけです。
どうやら「時間」というのは、われわれがそう感じるように進化してきた「脳」の中にだけあるもののようです……
と、このへんでギブアップ。
いやー、まいった。久しぶりに「脳」を使った。
いえ、日々文筆やら撮影やらで脳を使っているつもりですが、いつもは使わない筋肉を使って、筋肉痛になったような気分。いつもは使わない「脳」を使った。
ロヴェッリ氏は、この本が哲学書にならないよう気を使っているように感じられますが、どうしても哲学的になってしまうのです。さらに――ぼくにいわせれば厄介なことに――ロヴェッリ氏の思想の根底にキリスト教の影響が垣間見られることです。
ぼくは宗教にかんして自由思想家で（宗教的権威から自由でありたい）、哲学を語る教養も持ち合わせていません。
そういったわけで、この本を読んで使わない脳を使った気分になるのかもしれません。
いやー、疲れた。
読了の感想はこの一言に尽きる。
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こちらの作品も引き続きよろしくお願いします。
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