極小ブラックホール | TERUのブログ

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つれづれに

ブラックホール。

この言葉を聞いて、どんなモノを思い浮かべるでしょうか? テレビのニュースや新聞の見出しで、なんとなく見たり読んだりした記憶はあっても、それがどんなものか説明できる人は、多くないと思うんです。

正直に言うと、ぼくもうまく説明できません。

アインシュタインの一般相対性理論で計算すると、非常に重い恒星は、その生涯の最後に、自分の重さ(質量)を支えきれなくなって、どこまでも、どこまでも縮んでいくんだそうです。そして、ついに大きさのない「点」になるんだそうです。それをホーキング博士は「特異点」と呼びました。

それがブラックホール……と言われても、なんだか、わかったような、わかんないような……

最初にハッキリさせておきたいんですが、「大きさのない点」というのは、存在の矛盾ですよね。数学の概念としては存在できても、実際には「大きさのないモノ」とは、要するに「存在していない」のと同じですもんね。

でも、一般相対性理論によると、大きさのない点が、方程式の答えとして出てきちゃうそうなんですよ。

これは、どう考えるべきでしょうか?

われわれは一般相対性理論を正しく理解していないのか、それとも、一般相対性理論が間違っているのでしょうか?

科学者は、そのどちらでもないと言います。

なぜなら、一般相対性理論は間違ってはいないけど、ブラックホールのように、極端に重力の強い場合は、「使えない」と考えています。

ホーキング博士が、一般相対性理論の計算から導かれる、大きさのない点を「特異点」なんて名前を付けちゃったものだから、あたかも「特異点」というものが存在すると思われますが、そうではないということです。「一般相対性理論が及ばない特異な場所」という意味なんですね。

では、一般相対性理論で説明できない「ブラックホール」とはなんでしょう?

わかりません(苦笑)。

なぜなら、われわれはまだ、一般相対性理論よりも、より深く重力について語れる理論を持っていないからなのです。

とはいえ、もちろん候補はあります。

そのひとつが、超弦理論。この理論では、時空の最小単位は、無限に小さな「点」ではなくて、一次元の紐だというんです。

あるいは、ループ量子重力理論というのもあります。この理論は、時空をなめらかに連続するものではなくて、「飛び飛び」の「離散的なもの」として説明しています。

どちらにも言えることがひとつ。

なんのこっちゃ?

いや、冗談抜きで、一般相対性理論に代わる理論は、まったくもって、理解の範囲を超えております。理解できないモノを説明することも不可能なので、この辺でやめておきます。(ちはみに、わからないながらも、ぼくはループ量子重力理論のほうが好きです)

しかし、これから理論の中には、セルンの大型加速器で、非常に小さなブラックホールが作られるかも知れないと予言しているので、無視するわけにはいきません。

ブラックホールというのは、質量を一点に凝縮することで、非常に強い重力発生して、そこから光さえも逃げ出せない状態です。

ふつうは、太陽より何倍も大きい恒星クラスでないと、こういう現象は起こらないのですが、理屈の上では、たった0.1gの質量でさえも、それをとんでもなく小さな「一点」に詰め込めれば、ブラックホールは作れるはずだ……というのが、その考え方の基本です。セルンの大型加速器には、その能力があるかも知れない。

そんな心配性な人たちの声を聞いて、セルンの科学者たちは、そんな心配はいらないと発表しました。

極小のブラックホールは、作られたつぎの瞬間には、蒸発して消えてしまうと言うのです。これはホーキング博士が発表したホーキング放射というブラックホールが蒸発するという理論に基づいています(ブラックホールは熱的に「黒くない」という理論ですが、これまた大変難しい)。

じつは、セルンの大型加速器が、非常に大きなエネルギーを扱えるとは言っても、それは「いまの技術で、人間が作り出せる」範囲のことです。宇宙には、もっとはるかに強いエネルギーが満ちあふれていて、それによって加速された粒子が地球に降り注いでいます。

それが「宇宙線」と呼ばれる、宇宙から降り注ぐ放射線です。

こいつは、超強力ですぜ。なにせ、セルンの大型加速器が最高出力で運転したときより、1000倍から1万倍の強さがあるんですから!

セルンの科学者は、もし大型加速器でブラックホールが作るなら、それより数千倍も強い宇宙線によって、地球の空の上では、毎日のようにブラックホールが作られているはずだと言うのです。でも、地球はそのブラックホールに吸い込まれて消えてはいないと。

これには、二つの解釈があります。

第一、ホーキング放射が実際に起こって、出来たてのベビーブラックホールは、生まれたつぎの瞬間には蒸発して消えてしまっているから。

第二、理論が根本的に間違っていて、そもそもブラックホールなんて作られていないから。

なるほど……

どちらにしても、われわれがブラックホールに飲み込まれる心配をする必要はないようです。ですが、どちらが正しいかを知りたいという好奇心は消えません。それによって、宇宙がどうやってできたかを知る手がかりになるからです。

ブラックホールは、多くの「質量をため込むことができる倉庫」ですから、宇宙に満ちている暗黒物質(ダークマター)の正体ではないかという説もあります。つまり、セルンの大型加速器での実験は、ダークマターの研究でもあるのです(もちろん、ブラックホール以外の候補も探しています)。

こうして科学者たちは、今日も地下深くにある実験装置で、宇宙の秘密を探っているのです。