根拠あるまともな本  「○○を食べると健康に良い」という情報は、本やテレビやインターネットに溢あふれている。だが本当にそれらの情報は正しいのか。いかなる根拠のもとに、健康に良いと主張しているのか。医療と健康に関する「根拠(エビデンス)」の世界的エキスパートである著者は、その多くがまともな根拠を欠くことに警鐘を鳴らす。

 たとえば最近では、牧草で飼育した乳牛のバターを使った「バターコーヒー」が流行した。これを推奨したのはシリコンバレーの実業家だが、本書によればバターが体に悪い油であることは、すでに数多くの研究から判明している。本人は調子が良くなった気がしたのかもしれないが、一個人の主観であって、多数の客観データに基づく科学的な根拠とはいえない。

 著者は「最新の研究では」との言い回しに注意せよともいう。新奇なだけで、研究として質が低いかもしれないからだ。根拠として重要なのは、新しさではなく、信頼性が高いことだ。研究の信頼性をどうランク付けするのか著者は説明し、信頼性の高い結果を教えてくれる。

 たとえば玄米、魚、オリーブオイルが健康的な食品であること、白米、ソーセージ、バターが健康的な食品でないことは、十分に信頼性の高い研究結果だという。なお、ここで「健康的」とは、病気になりにくく長生きできるという意味だ。ダイエットへの知見も多い。フルーツジュースは太るが、果物はやせるのだという。また、玄米はダイエットによいので、「炭水化物抜きダイエット」をするより、食事を白米ではなく玄米に「置き換える」ことを著者は勧める。

 「究極」をうたう本書のタイトルは、「あやしい健康本」の薫りを漂わせている。だがこれは誘蛾灯ゆうがとうのようなものであって、あやしい健康本にすぐ飛びつく者ほど、この究極的にまともな本を手にとらせる仕掛けであろう。すべての書店の棚からあやしい健康本を取っ払って、本書に置き換えることを強く薦めたい。

 ◇つがわ・ゆうすけ=聖路加国際病院、世界銀行勤務などを経て、米カリフォルニア大ロサンゼルス校助教授。

 東洋経済新報社 1500円