ボジョレーヌーヴォー2012をパカレが語る | ワインインポーターのテラヴェールのブログ

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いよいよ11月。ボジョレーヌーヴォーがやってきます。

『100年に1度の難しい年』とも言われる2012年ですが、

実際に造り手達にとってはどんな1年だったのでしょうか?


ジョルジュ・デコンブ、フィリップ・パカレ、

そしてマリー・ラピエールが2012年を振り返ります。


2012Beaujolais Nouveau

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不安定な太陽ながら、開花時期に入るまでには、
なんとか新梢は成長した。

しかし、開花直前の更なる天候不安定によって
葡萄樹は十分に養分を吸収することができず、
遂に自己防衛本能を働かせる。


『花ぶるい』


開花し、葡萄果実の元が生育される時期に天候が

不安定であった為に葡萄樹は果実に与える養分を制限してしまう。


新しい果実よりも自分自身の生育に養分を使う為、
生き抜くための葡萄樹の知恵が花ぶるい。


葡萄果実の素はぽろぽろと落ちてしまった。

この時点で大きく収量が落ちることは決定的であった。

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5月 『開花時期のズレ』
2012年の収量が減ってしまった最大の原因が
開花時期のズレ。


4月の初旬に温かな陽光によって始まった開花は、
不安定な気候で、なかなか上がらない気温と少ない日照量で進まない。


『全ての花が開ききるまでに1カ月以上も費やしてしまった。
これはヌーヴォーにとって致命傷だった』

(ジャン・クロード・シャヌデ)


通常葡萄は開花から100日で熟すると言われる。


開花時期の多少のズレはワインにとって、むしろプラスに影響する。
色々な要素を持った葡萄果実はワインに複雑味を与える。


『しかし、30日以上も開花時期が違えば、
収穫時に熟度が足りず収穫できない葡萄が増える。
未熟な果実ばかりではワインも未熟なものになってしまう』

(マリー・ラピエール)


勿論、3人は収穫時に未熟な果実を樹に残したままにし、
完熟した葡萄のみを収穫するという決断をすることとなる。




6月 『雹害』
2012年という年は、どこまでも造り手を苦しめるらしい。


4月、5月に続き、6月にも大規模な雹がボジョレーを直撃。

ヌーヴォーを産する畑は早い成熟が必須である為、
比較的低地にあることが多いが、低地の畑ほど雹の被害が大きかった。

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※雹で大きな穴があいた葡萄葉


≪シャトー・カンボンの畑≫
葉は雹によって大きな穴が沢山開いていた。

勿論、葉だけではなく、葡萄も雹によって破壊された。


特に6月の雹はまだ柔かい果皮を簡単に痛めつけてしまった。

ここでも、また葡萄の数は激減してしまった。



こんなにも厳しい仕打ちがあって良いのだろうか。
しかし、これも自然の力。
自然に逆らっても良いワインはできない。


『良い年もあれば、難しい年もある。当たり前のこと』
(フィリップ・パカレ)


『その年、その年、その瞬間でベストの判断をしていくことがワイン造り』
(ジョルジュ・デコンブ)

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※収穫時未熟だったので10月まで樹に残されてた葡萄


『ヴァン・ナチュールでは自然がワインを造るの。
人工的なワインではレシピがワインを造るけどね』
(マリー・ラピエール)



7月 『曇りがちな空』
雹害を受けた畑。
決して最高とは言えない状況は好転しない。


気温は上がらず、太陽は顔を出さない。
明らかな日照量不足で葡萄の生育は遅いまま。


湿気の多い気候のお陰でウドンコ病が発生。
毎日欠かさず畑に出て腐敗果を取り除く作業が続いた。


例年以上に畑に出てケアしてあげなくてはならなかった。
造り手に休まる時間は無いようだ。




8月 『猛暑』
8月後半に入ると一転、強い陽光が一気に戻ってきた。

一気に成熟度を上げていく葡萄。


糖度も順調に上がり、アントシアニン、タンニンも成熟していく。
これまでの天候不良が嘘のように葡萄は健全さを取り戻していく。

ボジョレーに少しずつだが、希望が湧いてきた。




9月 『やっぱり自然は味方だった』
8月の後半からは晴天が長く続いてくれた。
葡萄はしっかり乾き、熟度は十分!!!


更に葡萄の房数が自然と減ったことで、
1つ1つの葡萄は十分な栄養を保持している。


収穫時期は例年より遅め。
まずはマリー・ラピエール、長男マチュ、長女カミーユ、次女アンヌが
揃ったM.ラピエール(シャトー・カンボン)。

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≪M.ラピエール(シャトー・カンボン)収穫≫
収穫は9月10日から始まり、9月24日まで続けられた。


非常に少ない葡萄しか畑には残されていないが、
8月末からの乾いた気候によって葡萄は凝縮している。


しかし、開花時期に大きな開きがあることで
完熟した果実と未熟な果実が同居しているという難しい状況。


私達の判断は粒選り。未熟な房は樹に残し、収穫した果実も

先端部分の未熟な果実や、腐敗した果実を1粒ずつ除いていったの』
(マリー・ラピエール)


完璧な葡萄しか使わない。




≪ジョルジュ・デコンブ収穫≫
ジョルジュ・デコンブの収穫は9月20日から10月5日頃まで続いた。

デコンブのヌーヴォー用の畑は低地にある為に雹の被害は大きかった。


『全滅だ。ほとんど収穫できないよ』
(ジョルジュ・デコンブ)


ヌーヴォー用の畑は壊滅。


『クリュ・レニエの葡萄でヌーヴォー?』

なんと2012年はクリュ・ボジョレーで
最も早く葡萄が熟す“レニエ”の葡萄を使ってヌーヴォーを造っている!!!


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『レニエは早く熟するので、ヌーヴォーに間に合うと判断した。
でも、まだ発酵は終わってない。自然酵母だからね。
間に合うかどうかは自然が決めること(笑)』
(ジョルジュ・デコンブ)


10月1週目、コンクリートタンクの中でアルコール発酵中。
例年、濃厚なヌーヴォーを造り上げ、
驚かせるデコンブのレニエがブレンドされた2012年ヌーヴォー。


恐らく、2011以上の完成度となるであろう。




≪フィリップ・パカレ収穫≫
フィリップ・パカレのヌーヴォーは昨年に続きクリストフ・パカレの畑から。


北部の畑は雹の被害が非常に大きかったので、
昨年とは違う畑の葡萄を使用することとなった。

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ヌーヴォーに使われる畑は…

■Linrignie(ランティニエ)
モルゴンの南西部。ポワール香が強い。
■Lincie(ランシエ)
モルゴンの北部。ミネラル・タンニン量が多い。
■Legny(レニィ)
ボジョレー南部の粘土石灰土壌。
■La chapelle de Guichay(ラ・シャペル・ド・ギシャ)
シエナの近くに位置する砂質が多い軽やかな畑。
■Corcell(コルセル)
ボジョレー南部に位置する花崗岩の典型的な畑。


『この5つの畑をアッサンブラージュするつもり。
ミランダージュによって例年以上に凝縮した。
繊細さと力強さを併せ持つだろう』
(フィリップ・パカレ)





ミランダージュ
3人が声をそろえるのが、このミランダージュ。

“花ぶるい”によって多くの葡萄は結実不良を起こしている。

これによって生産量は大きく減少したのだが、

一方で2012年ならではの素晴らしいことが起こっていた。


ミランダージュによって結実不良をおこした葡萄は

大きく成長することができず、通常の葡萄の1/3~1/5程度

の大きさで成長が止まってしまう。

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※ミランダージュによって小粒のガメイ


この葡萄果は果汁に対して果皮の比率が異常に高くなる為、

生産量は減るが、果皮からの色々な要素を多く有することになり、

確実に品質を高めてくれるのだ。




最後に自然は僕等に味方した!!!
100年に一度の難しい年とも言われる2012年。


マルセルの旧友でシャトー・カンボンの共同オーナーである

ジャン・クロード・ジャヌデの89歳になるお爺さんは

『生まれてから、こんなにも少ない葡萄

しかならなかった畑を見たことがない』と嘆く。


しかし、自然は彼等を見放してはいなかった。


生産量を大きく減らした最初の原因である“花ぶるい”によって

ミランダージュが起こり、小粒の葡萄となったのだ。


終わってみれば量は半減だが、

例年以上に要素の詰まったボジョレー・ヌーヴォーができている。


この特異なヴィンテージのヌーヴォーを彼等はどう仕上げたのか?

自然と共に醸した2012年ボジョレー・ヌーヴォー。

彼等の良心が見えてきます。

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