スイート・バレンタインを2人で(前編):メロキュンプレゼンツ!!《ハッピー♡プレゼント!!》 | よりみち小部屋。(倉庫)

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浅がスキビ二次の書き手になる前に終了してしまった憧れ企画が復活!
また素敵作品が読めると喜んでいたら、何とお誘いを頂いて。
ぺいぺいぺらぺら、無謀にも参加表明を致しました。

みなさんご存知、メロキュンリターンズ。
風月さまピコさま魔人さまのお三方が主催してくださっております。
(お名前にそれぞれお祭り会場へリンクをはらせていただいています)

メロキュンって何だー?お題にあってないぞー?
石が飛んでくるのを覚悟でぺいぺいぺらぺら、参加でございます。
バレンタイン当日ならたくさん作品がアップされるはずだから埋もれてしまえばいいのよーー!!

バレンタインに遅刻しそうだったから、とりあえず仕上がってる部分をアップすることにしたら前後編になっちゃったとか言わない言わない……


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スイート・バレンタインを2人で(前編)
メロキュンプレゼンツ!!《ハッピー♡プレゼント!!》



にっくき男にファースト・キスを奪われ。
その時には気づいていなかった、ほのかな恋心を抱いていた男に頬にキスをされたあの苦くて甘いバレンタインから一年後。
キョーコは、ほのかな恋心を抱いていた男と「恋人」という関係になって、この日を迎えていた。

***


天上人であった蓮からキョーコが告白を受けたのはキョーコの誕生日であるクリスマスだった。
それから2か月弱、恋人同士となって初めて迎えたバレンタイン。
相変わらず「抱かれたい男No.1」の称号を有し、絶大な人気を誇る蓮のスケジュールは凄まじい。
しかし彼の敏腕マネージャーがその手腕を発揮して21時に蓮の仕事は終了。
遅い時間からではあるが、蓮の自宅で一緒に食事をすることができたのだった。

「ごちそうさま。おいしかったよ」
「おそまつさまです」
キョーコの作った夕食を食べ終えて、蓮が箸をおく。
蓮より少し早めに食べ終わっていたキョーコは、蓮の食器をさっとお盆に乗せた。
常ならば食後は少しゆっくりしてから片付けを始めるのだが、キョーコはささっと自分の食器もまとめてお盆に乗せて立ち上がった。
いつもとは違うキョーコの行動に、蓮は首をかしげる。
「もう片付けるの?」
「あ、はい。食後にデザートを用意していますので……コーヒーと一緒に召し上がっていただこうと思いまして」
「そうなの?片付け、手伝おうか?」
蓮が申し出ると、キョーコはふるふると首を横にふる。
「いえ、大丈夫です。片づけたらすぐにお持ちしますから、敦賀さんはゆっくりくつろいでいてください」
言うとキョーコは踵を返し、キッチンへと向かった。

「お待たせしました」
10分もしないうちに、キョーコは片付けをすませてリビングへと戻る。
手に持ったお盆の上には、コーヒーが二つと……
「……ケーキ?」
蓮は目の前に置かれた皿。その上には小さな丸いケーキがちょこんと乗っていた。
「はい。チョコレートムースです。今日はバレンタインですので……その……」
「俺のために作ってくれたの?」
「はい……」
キョーコがもじもじしながら答えると、蓮はふわりと笑う。
「嬉しいよ」
心から喜んでくれていると分かる優しい笑みを直視できず、キョーコは顔を真っ赤にして俯いてしまった。

(敦賀さんなら、バレンタインにチョコレートをいっぱいもらうもの。どうせならツルンって軽く食べられるものの方がいいわよね)
そう考えて、昨年のバレンタインにはワインゼリーを贈った。
けれど関係が変わった今年。キョーコはどうしても蓮にチョコレートを贈りたくなってしまった。
考えた末に、食後のデザートとして味わってもらおうと小さなチョコレートムースケーキを用意するに至ったのだった。

何度も作って味見して、甘さを控えて。蓮の胃の負担にならないようにと今日までひそかに研究を重ねてきた。
「一応、甘さは控えめにしてあります!お口に合わないかもしれませんが……どうぞ」
キョーコがそろりと顔を上げて進めると、蓮は「ありがとう、いただくよ」と礼を述べてからケーキの皿を手に取った。

しかし、蓮はフォークを持ったところで手を止める。
「……どうかされましたか、敦賀さん?」
ぴたりと動きを止めてしまった蓮に、キョーコは尋ねる。
もしかしてチョコレートムースは嫌いだったのだろうかと不安になってくる。
しかし、蓮の口からはキョーコの予想もしていなかった言葉が返ってきたのだった。

「うん、どうせなら、食べさせてもらえる方が嬉しいかなぁって」
「え?」
蓮はケーキの皿をテーブルに置くと、ついっとキョーコの方に押しやった。
「食べさせて、くれる?」
眉を少し下げ、小首をかしげておねだりする姿は、俳優敦賀蓮では絶対に見られない姿だ。
プライベートで関わりのあったキョーコですら、恋人という関係になってからしか見られていない。
キョーコにしか見せていない蓮の姿でおねだりされてしまえば、キョーコに断ることなどできなかった。


「……それじゃあ、失礼します」
フォークを手に取り、ムースを適量掬い取る。
そして片手を下に添えながら、蓮にムースの乗ったフォークを差し出す。
「どうぞ」
「ん、ありがとう」
(わ……やっぱりまつげ、長いな……)
近づいてくる蓮の整った顔をぽんやりと眺めるキョーコ。
蓮は差し出されたフォークをぱくりと口に含み、ほどなくしてゆっくりと顔を離していった。
ムースなので咀嚼の必要はない。蓮は口内でゆっくり溶かすように味わってから、嚥下する。
「ん……おいしい」
「あ、ありがとうございます……」
口に含んでから嚥下するまでの蓮の動きはどこか艶めいていて……
キョーコの心拍数は一気に上昇する。
「もう一口、くれる?」
「あ、はい!」
この後、顔を真っ赤にしたキョーコは、蓮がチョコムースを完食するまで蓮の口にチョコムースを運び続けることになったのだった。

「ありがとう、おいしかったよ」
「お、オソマツサマデシタ……」
蓮の口にムースを運ぶという行為に慣れることなどなく、ムースがなくなってしまっても、キョーコの心拍数は上がったままだ。
蓮がチョコムースを完食したことに安堵の息を吐き、キョーコがフォークを皿に置いたその時。
ふいに蓮がゆらりと動き、キョーコの顔に蓮の影が落ちた。
「敦賀、さん?」
キョーコの呼びかけに、蓮が答えることはなく。
蓮の顔がゆっくりとキョーコに近づき……

……チュッ……

キョーコの頬に蓮の唇が押し当てられる。

突然のことにキョーコが目を真ん丸にして固まっていると、ゆっくりと離れた蓮が至近距離で微笑みかける。
「すごくおいしかったよ、チョコムース。ありがとう」

(うえええええええええええ?!)
囁かれたその声に、キョーコの思考は爆発する。
次の瞬間、その場にいるのが居たたまれなくなってキョーコはがばっと立ち上がる。
「ど、どういたしまして!わ、私っ!片づけてきますね!!」
「えっ……?」

キョーコを捕えようとした蓮の手をするりと躱し、キョーコはケーキの皿を持ってキッチンへと駆けこんだ。
シンクに皿を置くと、そのままへなへなとへたり込む。
「……何なの、あれ……」

思い出されるのは去年のバレンタイン。
ワインゼリーのお礼にと、頬にキスを贈られたのだ。
あの時も思考を全て持って行かれたが、今回もだ。いや、それ以上と言えるだろう。

頬以外にだって、蓮とはキスをしている。
もっと激しいキスだって経験しているはずなのに。
「反則よぅ……」

バレンタインに贈った本命のチョコムース。
そのお礼にもらった頬のキスの破壊力は、昨年以上。
キョーコはしばらくそこにへたりこんだまま、リビングに戻ることができなかった。

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後編へ続く?