財務省デモの様子 | Ternod Official blog

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哲学思想研究、文人画。 反緊縮行動(Anti-Austerity Action)〔生ー政治(Bio-politique)に抵抗する自律労働者(Autonomia Operaia)〕。 ブラック・ミュージックをこよなく愛す。レコード/CD店、古本屋、美術館などで出没することが多いです。

 

3月14日(金)、夜に東京・霞が関の財務省前で行われた抗議行動を見てきました。

 

行動の趣旨は、財務省の財政均衡主義、プライマリー・バランス(基礎的財政収支)黒字化を目指すという名目での増税緊縮財政に対する怒りをぶつけようというもので、思想や主義主張はバラバラです。

『朝日新聞』や立憲民主党の政治家の中には、デモの中で目立っている主張を取り上げて反財務省の論調や行動の全体が陰謀論者であるかのような印象操作を行っていますが、的外れもいいところ。

すでにデモの主催者や参加者を超えて国民運動的な様相を呈しています。

重要なのは、デモの一部の論調の是非論よりも、なぜ多くの国民が財務省デモに関心を寄せているのか? にあるといえます。

 

財務省の問題は、ひとつは日本の財政を一括して担っていることにより、「省庁の中の省庁」として他の省庁の予算にまで様々な注文を付けて干渉していることにあります。

戦前は軍部(陸軍省・海軍省)という大蔵省より大きな発言権を持つ省庁が存在していたことで、大蔵省も軍部の意向には逆らえませんでしたが、軍部がなくなった戦後日本では、圧倒的な「大蔵省(財務省)一強」というべき状態になっています。

次に、財務省は歳入と歳出の両方を同じ省庁で管轄していることに問題があります。

具体的には歳入は国税庁、歳出は財務省主計局が担っており、歳出と歳入を同じ省庁で行えば、帳尻を合わせようとするのも当然でしょう。

だが日本国憲法第86条「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない」とあり、憲法上は予算編成権は内閣にあります。

財務省主計局は内閣の予算編成の事務方を受託されているだけにすぎませんが、実質的には財務省主計局が予算編成権を持っているようなものです。

たとえばアメリカ合衆国では、1939年に財務省の予算編成機能を大統領直属機関に移管して、財務省は会計機能に特化しており、現在は大統領が予算案を作成して連邦議会に提示しています。

日本でも過去、大蔵省(財務省)の主計局の一部を内閣府に移管するなど歳入・歳出の分離が試みられたことはありますが、そのたびに大蔵省(財務省)の抵抗により立ち消えになっています。

だが、より強い政治力を発揮して、財務省主計局を内閣府主計局に移管し、財務省は会計事務の機能に特化すべきです。

 

むろん、歳入・歳出の分離だけで問題が解決できるとは思いません。

たとえば1990年代後半、ノーパンしゃぶしゃぶ接待事件を受けて、三塚博大蔵大臣と松下康夫日銀総裁が辞任する事件がありましたが、その後、大蔵省から金融政策に関する部局を分離して内閣府金融庁が発足しました。だが財金分離は最初期だけで、すぐに金融庁長官は元財務官僚が就任するようになりました。

次に、橋本龍太郎政権による省庁再編の一環として、大蔵省主計局を内閣府に移管する計画がありましたが、大蔵省(財務省)の抵抗もあり、経済財政諮問会議と骨太の方針を打ち出す方向になりました。

だが、岸田政権の2024年6月、骨太の方針には2025年プライマリー・バランス黒字化が明記され、財務省の財政均衡主義に沿ったものへと変質しています。

 

歳出入分離を進めると同時に、省庁に対する政治主導が必要です。

安倍政権がつくった内閣人事局は野党がやり玉に挙げていますが、内閣人事局は必要です。

本来は内閣人事局という形ではなく、大臣は「お飾り」で象徴の最高権力者は事務次官という現状に対して、大臣と同等かつ事務次官より上位の権限を持つ役職を設置し、そこに与党政治家を送り込む、政治任用システムの導入が必要です。

 

また重要なのは、単に緊縮か反緊縮かというだけではありません。

もし財政健全化を目指すというのであれば、政府・日銀アコードで示された年2%の物価上昇目標と持続的な経済成長を長期にわたって維持する必要があります。公的債務残高を減らす方法は、国民経済を過度に圧迫せず適度に景気を刺激するマイルド・インフレを十数年と実現することで、減価する以外に方法はありません。

同時に対GDP比での公的債務残高の解消は、持続的な経済成長を実現する以外に方法はありません。

かつてのような高度経済成長である必要はなく、たとえ年率1%程度の低成長であっても、成長していることが重要です。

ドーマー条件というのがあります。

経済成長率が公的債務の利子率を上回っていれば財政は安定するという見方です。

この点でも、持続的な経済成長は必要であり、過度の増税緊縮路線は、再デフレ化やマイナス成長をもたらし、かえって財政を悪化させるでしょう。