作品選びをしているときに、本当は中原中也の違う作品を選んでいました。
でも、何度も読み直しているうちに、最後にここは代表作を入れようと考え、あとで入れ直したところなんです。
その時に、8月の所に、そのまま入れてしまったという経緯があります。
さて、この「汚れっちまった悲しみ」とは、何を意味するのでしょうか。
中也は女優の長谷川泰子と同棲していましたが、泰子は中也のもとを去り、小林秀雄と同棲を始めます。
ここからは私の勝手な解釈ですが、「汚れっちまった悲しみ」とは、泰子との別れだったのではないでしょうか。
ただの訣別の悲しみだけではなく、そこには、
小林秀雄を選んだ泰子に対する思い、
小林に負けた悔しさ
取り残された自分の惨めさ
寂しさ
自暴自棄
色々な感情が渦巻いているから、よごれた悲しみと表現したのではないでしょうか。
そんなことを考えると、
この4連の詩に込められた中也の想いが、少しわかるような気がします。
そして、「サーカス」
中也はこの詩を気に入っていて、「ゆあーん ゆよーん」のオノマトペを独特に歌ったということです。
このオノマトペですが、中也は、宮澤賢治の詩集「春と修羅」に出会い、口語による響きに惹かれたということですので、その影響かもしれません。
この詩の中で、「ヤ行」の音と「カ行」の音を、絶妙に使っていることは、音読するとよくわかります。
3回「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」
がありますが、私は、ブランコを見ている本人の気持ちを反映して3回とも変えて読んでみました。
これも私の勝手な解釈ですが、
この作品は、お酒好きの著者が、お酒に酔った勢いで、気分よく作った詩なのではないかと思えるのです。
だけど、かなり構成が計算されている詩です。
辛いことがあったけれど、
「今夜 ここでの一殷盛り（ひとさかり）」
と高揚した気分と、
この、揺られたようなリズム感
観客がイワシに見えるところ
「夜は劫劫と更けまする」
といきなり「まする」という言葉になったり…。
行替えも、独特ですが、その「連」の書き方にも作者の意図があると思います。
伝わってくるのは、力の抜けたオノマトペと
ノスタルジックな高揚感。
ということで、中原中也の二つの代表作。
皆さんは、どんなふうに音読しますか？
是非、声に出して、作品を味わってみてください。
詩は、読み手の解釈がそれぞれ異なるものなので、正解はありません。
言葉が自分の心の中に入ってくれば、それでいいのです
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