Mが突然現れた。
彼はいつものように寝室で着替え、シャワーを浴びる。
私は驚いて、ベッドから跳ね起きる。
Mは石鹸の香りのする身体で、私を包み込む。
別れるときに、私を抱きしめてくれたように・・・。
懐かしさと、嬉しさで、私はだまって彼の腕の中にいた。
でも、なぜ彼がここにいるの?
彼はもうこの世界にいないはずでは・・・
ここで、目が覚める。
やっぱり、夢か・・・
ところが、窓がかすかに開いて、レースのカーテンが揺れている。
壁には、Mのお気に入りのストライプのシャツが掛かっている。
(来たのだ!彼は本当にこの部屋に来たのだ!)
私は驚きのあまりもつれそうな足で、次女の部屋に行く。
次女は、寝室の壁にかかったシャツを見て当惑している・・・。
ここで、再び目が覚める。
いつもの私の寝室。
ベッドサイドには、昨夜読み終わった
浅田次郎著 「おもかげ」が置いてある。
この小説が、Mに合わせてくれたのかもしれない。
物語のような夢だった。
心がふとあたたかくなった。
昨夜読み終わった、感動の作品!
浅田次郎著
「おもかげ」(毎日新聞出版)