「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」


 ご存知、川端康成の代表作の一つ「雪国」の冒頭だ。叙情的で美しく感じる。雪というのはキレイだ。音も吸収する。においもしなくなる。静かな澄んだ世界になる。


 太陽いっぱいの東京から雪降る秋田に戻った。飛行機は30分遅れですんだ。吹雪になると引き返すこともあれば、欠航することもある。列車も遅れや運休がしばしばだ。


 白い雪に白い道路。東京から帰ると私も美しいと思う。現実は、道路の雪を除かなければ車は渋滞し、物流も滞る。2mも降り積もる雪。毎日朝から雪かきをし、屋根の雪下ろしも年に一度や二度では済まない。事故で亡くなる方も絶えない。各家庭の労力は大変なものだ。高齢化の進む地域では、ボランティアの手を借りなければ、この厳しい冬を乗り切ることが出来ない。


 4カ月も冬の生活を過ごさざるをえない。雪の降らない太平洋側に比べ、ハンデがありすぎる。そのような中で、産業や農業が競争している。こういうハンデのある地域に競争力をつけさせる。それには、全国一律ではなく、地方の高速道路の無料化や法人税の減免など、一国多制度が必要だ。10年ほど前から訴えてきている。どうして全国一律の制度でなければならないのか。分権を進め、地域ごとに特徴のある制度を作っていかなければならない。地方も国に甘えず、自己決定・自己責任で行動することが地域の発展につながると思う。


 まもなく、ふるさと横手では冬の祭り「かまくら」が始まる。20世紀を代表するドイツの建築家ブルーノ・タウトは、昭和11年にかまくらを観た感激を、自らの著書「日本美の再発見」で、「ここにも美しい日本がある。それはおよそあらゆる美しいものと同じく、とうてい筆紙に尽くすことはできない。」と述べている。しかし、それを維持するのは本当に大変なことだ。雪国の苦労は、雪国に住んだ人しか理解できない。




◆参考◆

横手の「かまくら」
2月15日と16日、横手市で行われる「かまくら」は、雪室の中に神座を設けて水神様を祀り、中で子どもたちが甘酒を飲んだり、お餅を焼いたりして遊ぶ民俗行事で、約400年の伝統がある。大きさは、直径約3.5メートル、高さ約3メートルのものが多い。