今から15年前だと思う。チュニジアを旅した。


 チュニジアンブルーと言われる青い空、青い海、白い壁にブルーの縁取りをした家が並んでいる。子どもたちの目は輝き、明るい色の制服を着て学校に通っていた。街の清掃も行き届き、アラブにこんなに綺麗な街があるのかと感嘆した。


 現地の案内人が、白亜でひときわゴージャスな建物を教えてくれた。そこには大統領が住んでいた。「国づくりは教育」と掲げ、教育に力を入れ、マグレブ三国(モロッコ、アルジェリア、チュニジア)では最も成長していた。強いリーダーシップで、国の発展に尽くすまっただ中であったと思う。


 ところが、今、大統領が失脚した。23年間も続いた長期政権が腐敗を招き、大統領は亡命せざるをえなくなった。歴史的にはよくあることだ。国民の声は恐ろしい。国民の信がいかに大切なことか。


 その旅の終わりに、ランドクルーザー(四輪駆動車)で、サハラ砂漠のツアーに出かけた。小さなオアシスに寄り、長い昼食の時間に、ロバと一緒に砂漠を歩いてみないかとベルベル人に誘われた。私はロバとともに、あの広大な灼熱の砂漠へとオアシスから出かけた。私はロバのシッポをつかみ、ついていくのに必死だった。ロバは思うままにどんどん進んでいく。


 そのうちに方向が分からなくなった。帰るにはどうしたらいいのだろう…。不安になってきた。水も持っていない。この砂漠でどうやって生きて行けばいいのか。このまま日干しレンガになってしまうのだろうか…、ロバに引かれながら思った。


 いつの間にか元のオアシスに戻ってきた。ロバを貸してくれたベルベル人はゲラゲラと笑っていた。砂漠の恐ろしさ、そこで生活することの厳しさをまざまざと知らされた。日本はどこにでも人が住んでいる。道しるべもある。安心な国だとつくづく感じた砂漠のツアーであった。


 今日から通常国会が始まった。国会では足の引っ張り合いばかりで、毎年首相が代わっている。これもまた国民の信を失いかねない。各党は襟を正して、大きなオアシスを探すような建設的な議論をしていただきたい。私もそうしたい。前進できるような国会であってほしいと思う。