PC、カメラ、その他をカバンごと置き引きされ、しょげしょげだった。
警察署で盗難届けをつくってもらったあと、ホテルへ向かった。
「とっても安全なところだよ。鍵もかけなくていいし、門番がずっと見張ってくれる」
とのセンセイのことばをうのみにしていた。
ついたところは、置き引きにあったミスタードーナツと、目と鼻の先。ものすごく人通りが多い。それも、ぱっと見でかたぎじゃない人ばかり。
ズボンの背中に、でっかいジャックナイフをさして歩く男。
マハルキタ・ホテルは、まさにそんなやばい街角のど真ん中だった。
これがどこが安全なんだろう。
ホテルに入ると、ようするにドライブスルーのブティックホテルだった。
門番がいつもいる、というのは、車で入ってくる人のための、駐車係だった。確かに鍵はかけなくていい。というより、かけられない。
一階の部屋に通された。
天井が低く、薄暗い。それに、窓がひとつもない。
空気とりの窓わくがあったので、あけてみた。
もう目の前すぐが壁。真っ暗。
きぶんがみるみるみ~ると沈んできた。
盗難にあったあげく、今夜はこんな監獄みたいな部屋で眠るのか・・・
ムリ!
ぼくの中で、ほっぺのふっくらした赤ちゃんみたいなのが、ムリ! ムリ! と首をふった。
「あのう、自分でお金出すので、もうちょっと落ち着ける部屋に泊まります」
「あ~もううるさい! じゃあ好きなところに行けばいい!」
そそくさと荷物を運び出す。部屋には1時間しかいなかったので、とうぜん宿泊代を返して、と門番にいった。
「ノーノー。一度払ったものは、返せない」
ちっくしょー。
これがタイなら、必ずいくらかは、返してくれるのに。
こういうところが、フィリピンが観光で稼げない理由なんだ。
なんて思うけど、仕方ない。
ピノイクラブという、受付のある、ちゃんとしたホテルが近くにあった。
そこまで行くと満室だという。
もうひとつ、同じ系列のホテルなら、空き室があるとのこと。安心できるなら、どこでもいいから連れてって。
さいごに辿り着いたところは、セキュリティーのしっかりした、中級ホテルだった。部屋代は3000ペソ(6000円)したけど、安心と、疲れをとるためには、そのくらい出しても惜しくなかった。
やっと、長い長い一日が終わった。
広いバスタブにお湯をためて、ながながと身を横たえて、リラックスした。
明日のことは、明日の自分が考える。
今は、起きたことにくよくよせず、カードやパスポートを失くさなかったことを、幸運と思おう。
そうしているうちに、気持ちの切り換えができた。
海外の旅の途中は、気持ちの切り換え方が、とっても大事。
何かイヤなことに出会っても、すぐに気を取り直さないと、どんどん悪い方向に向かっていってしまう。
それは日常生活でもいえるかもしれないナー。
ナーンテ。
ほわりほわほわ。
(本当につづく)
