(あらすじ)フィリピンはビサヤ諸島のセブ。空港に到着し、そのままホテルへ。ビサヤの食べ物はうまいと知る。




セブに来ることになったわけ。

それは、マニラで盗難にあったから。

そのことはおいおい触れよう。


セブに着いた次の日、まずは腹ごしらえと、

そのへんをほっつきまわった。


食べ物やは、三段階ほどに分かれている。

まず、いちばん安いのは屋台。

焼き鳥や、バナナの葉で包んだご飯を

売っている。


その次は、大衆食堂。

棚においてある料理を指さし、盛り付けてもらって、

さいごに全体の料金を払うタイプ。


かつてマニラで大衆食堂に入ったとき。

少しイタリヤ風の野菜炒めを頼み、スープを

頼んだ。


予算の少ない活動のこと。楽しみは唯一食べることだけ。

それも高級店なんか、17パーセントも税金とるので、

入ってられない。


大衆食堂にかかっているんである。その日の喜びの全ては。


と、勢いこんで目の前の野菜炒めをじーっとにらむ。

まあ、まずはイカのだしのスープからいっとくか。

一口。


・・・・・・・・・・・・イカ臭い!!


なんだこの、そのへんのドブで洗ったような

イカ臭さは。お祭りの出店のイカ焼きなんて

目じゃない。お下品な話だが、オトコノコの

あれの匂いする。それも風呂入ってない労働者風の。


スープは終わっている。しかたがない、野菜炒めで

満足するか。

一口。


もうなんかポソポソしててドブ臭くてしなびてる。

食べられたもんじゃない。


じゃあご飯は。

ねっちゃねちゃじゃないか~!

まったく味もない。


この時ほど、心の底から絶望を感じたことはない。

唯一の楽しみの食べものが、人間の食べ物じゃなかったときの悔しさ。それをうまく表現できない、自分がもどかしい。


実際に涙が少しちょちょぎれた。


たまらん、と思い、トイレに行った。

すると、流す水のおけさえもなく、当然水洗でもない。

困り果てて、店のおばちゃんに、


「あの、トイレしたいんだけど、水ないですか」


ときくと、


「オーケー、心配するな」

と台所に声をかけ、

「ほらちょっと、お客さんが大○だってよ」

とかなんとかタガログ語でいう。


するとだよ、下働きの女の子が、

よしきた! といった感じで、水道からバケツに

水を汲みだした。


そして、サービスのつもりなのか、バケツを

かまえて、「ほら、心配しないで、やれ」

とトイレの前で私を待つ。


いや、自分で流すから! といくら言っても通じない。


いくらなんでも私ことコータ、世界中のトイレ事情に

精通する他ない人生だとしても、他人様に、

したあとのアレを、ザバーッと流されるのは、

どうしたって不可能よ。


バケツを構えて、今か今かと待っている女の子に、


「ちょっと、ホテルに忘れ物したから」


とごまかしつつ、逃げました。女の子は、

「あれ、しないの?」と言いたげに、きょとんとしてる。


マニラに行くなら、この程度のことは覚悟しないとだめ。


そんなマニラのがっくり来るような思い出を

かみしめつつ、セブの食べ物を探したわけ。


すると、大きめの食堂に、


「食べ放題120ペソ、特別キャンペーン」


の看板が。本気ですか、240円たらずで食べ放題!?


センセイとコータは迷わず入店。

お昼どきでごったがえしている。

まああるわあるわ、ビュッフェスタイルで、

ビサヤ産のカニ、エビ、貝やら何やら。

パイナツプルパパイヤマンゴーさらに大学いも、

スパゲティに焼き飯に焼き豚に鳥のから揚げに・・・


もうきりがない。いったいここは本当にフィリピンなのか?

食べるともう、とれたて海産物のうまいことったら。

マニラでのことは、ただのアクシデントだったのか?

というくらいおいしい。


右手にカニ、左手にエビを持ち、モンスターの如く

食らいまくるセンセイ。


「うまい、こりゃーうまいわ」


さっきからそれしか言わない。私の視線に気づいて、

「ん?」と顔を上げると、ほっぺたにエビの足が

ひっついている。


いつものことだが、センセイの口の周りは

スパゲッティのソースでべたべた。子供かい。


「ちょっと、顔すごいよ」

と私。


いきなりぶっちん切れるセンセイ


「あー、うっるさい! 最後にふくからいいんだ」


食べ物を食べているときに、話しかけてはいけない。

そのセンセイの鉄則を、つい忘れていた自分が甘かった。


おいしい食べ物を食べながらも怒鳴られ、

やり場のない怒りを、腹の奥底にためこみながら、

私は焼き飯をもそもそ食べる。


腹がいっぱいになり、外に出た。

そろそろ、ストリートチルドレンたちに、服をあげるタイミングだなあと思った。


(つづく)