T女史から、最近お叱りをいただいた。

いわく、


「このブログ、とびとびでダメ。すき間だらけじゃない」


その通りです。

厳しいお叱り、ごっつぁんです。


T女史のメッセージは、つまり”もっと行け”ということ。


もっと、ワタシの恥ずかしいところを、ばんばんオープンにして!


と、そのような裏の欲求だと、取っていいみたいだ。


本人の要求により、本当は内緒にしておこうと思った、飛行機内のT女史の様子について、公開に踏み切る。


T女史には悩みがあった。


チェンマイで会う皆さんに、「このひと、あのTさんじゃない」と思われたらどうしよう。


というのはT女史は歌手なのだが、すでにチェンマイでCDが出まわっている。そのジャケットに見めうるわしい自分の写真を使っているのである。


その写真をとってから早いくとせ。


かつての面影、ありやなしや。


かつて日本一の美人、小野小町も歌った。


花の色は移りにけりな いたずらに

 我が身世にふる ながめせしまに


(現代語訳)


昨日もご飯三杯喰っちゃったー。

今日は一日中寝てテレビ見てるし。

何にもしてないのに、腹減るんだよね。

あーやだ、年取るって。


そのような、昔の高貴な女性と同じ、おくゆかしき悩みに、T女史もとらわれているのだった。


話題をかえる。


世の中、ごまかしだらけ。

粉飾決済、食品偽装。

賞味期限切れてるのに、まだ売る。


何でそんなことになるのか。

ごまかす側の意見としては。


これ、外めはアレだけどさ、中はまだイケルんだよね。


その強引な理屈で、もう倒産してる会社の株券をハクつけて売る。

変色してる肉のラベルはりかえて売る。


確かにそれはよくないことだけど、じゃあ、じゃあよ?


エステとか、整形とかは、どうなの。

中身はおばさんとか、おっさんなのに、外見をごまかしてるのと、違う?


人間偽装。


私(おれ)外めはしわしわ、ヨレヨレだけど、中身はイケルんだよね。


強引。

賞味期限切れでも、ムリヤリ食べさせる。

別のいい方をすると、むだなく、エコ。

どっちととるかは、食べてみた人しだい。


話は飛行機にもどる。

ふと見ると、T女史がモー然と化粧している。

楽屋の歌舞伎役者かという勢い。


もう化粧ポーチの道具全部使い倒し。


完全武装したテロリストが、マシンガンと手榴弾とダガーナイフを同時に撃ちまくり、ふりまわしている状態。


チェンマイに着く40分のうちに、どこまでキレイになれるか勝負。

電車のなかの若い女子の化粧なんて可愛いもの。


パチッと鏡を閉じて、ブルース・リーみたいに、フゥーッと息を吐いている。


いったい、誰のかたきをとるつもりなのか。


そのとき、運悪くというか、目が合った。

何というか・・・

それじゃ舞台の美○明○じゃ・・・


派手な化粧をすると、それに合わせて性格も派手になる。

これが人の不思議なところ。


飛行機はチェンマイに到着。


みんな税関を無事ぬけたが、T女史だけひっかかった。


タイ人のおじさんにカバンを開けられそうになっている。


「このでっかいカバンのなかには、何が入っているのかな?」

にやにやしつつ言うおじさん。


「服よ! アイアム・ジャパニーズ!」

顔がすごいので、めちゃくちゃ迫力がある。


「わかったわかった、中身をちょっと見せてみい」


「このなかにはっ、し、下着が入ってるのホォ~!!」


T女史はソプラノなので、語尾がオペラになっている。


なぜか、他の係り員までよってきた。

まあまあ、となだめつつ、カバンを開けるおじさん。

中には、赤やらピンクやらの布がちらり。

まさか下着じゃないはずだけど、ヤバい雰囲気。


カバンの中を開けられ、興奮最高頂のT女史。

まるでふっとうしたヤカン。


あぐ、あぐと何かいいたそうなのだが、何をいいたいのか、さっぱりわからない。


あぶない。

このままでは、頭の神経が切れて、ご臨終だ。

そのとき、その危険を察したのか、おじさんがやっとT女史を解放した。


へろへろで税関を出てくるT女史だった。


チェンマイはもう夜。

迎えに来てくれていた人と会うため、ゲートの外に出た。


(つづく)