前回、原因不明の病で死んだ少年のことを、書きました。
それを見たセンセイから、もっとくわしく書きなさいと、教示を受けました。
何をかというと、キリスト教による文化破壊についてです。
もちろん私は、キリスト教徒の方を誹謗中傷するつもりは、ありません。
キリスト教徒の方の中には、見返りを求めずに、地道な慈善活動をしている方もいらっしゃいます。
しかし残念なことに、キリスト教は、世界のいろんなところで、一歩的な価値観の押し付けを行っているのも、事実です。
ここでは、私の見聞きした、チュークでのことを書きます。
前回書いたとおり、私たちが島に滞在している間に、葬式がありました。
亡くなったのは17歳の少年でした。
とある女性から伝えきいたところによれば、少年は黒魔術にかかっていたということでした。
黒魔術といっても、私の解釈では、一種の風土病です。
症状としては、最初に言葉が話せなくなり、やがて寝たきりになる。末期症状は昏睡状態に陥り、死に至る。
その症状を知った回りの人は、すぐに黒魔術だとわかったそうです。そうだとすれば、伝統的な医療を施さねばなりません。
亡くなった少年の母親は、熱心なキリスト教徒でした。
黒魔術など迷信だと、少年に伝統医療を受けさせませんでした。
科学的な西洋医学のみを信じ、島にある病院や、他の島の近代的な設備のある病院の診療を受けさせました。しかし、原因はそれでもわかりませんでした。
いよいよ黒魔術の疑いがあると、周りの人は母親を説得しようとしました。
黒魔術の解き方は簡単で、島の女性なら誰でも知っているということ。数種の薬草から薬をつくって飲ませるのです。
病院の薬は、「つくられてから時間がたっている」からきかないのだそうです。薬草をつんで、一定期間の間に薬にしなければ、利かないのです。
そして、その薬草はチュークの森の中でしか、とれません。
つまり、黒魔術とは、西洋医学の範ちゅう外にある、未だ発見されていない病気ということになるでしょう。
それを、誰かの恨みや悪い思いが原因だ、とするのは、チューク人の想像力です。原因が何であれ、治療できればいいわけです。
それでも母親は、キリスト教の教会に通っていたので、貴重な忠告に耳を貸しませんでした。その結果、大事な息子を失うことになったのでした。
キリスト教の教会では、現地の素朴な信仰を劣ったものと見なし、ジーザス・クライストのみを信じよ、と教えていたはずです。
その教えを信じ込み、不幸な結果を招いた母親は、気の毒の一言です。
無学な人々に、一方的な教えを信じこませ、操っているキリスト教会の罪は、計り知れません。
チュークのような僻地で、信者を増やすことは、キリスト教徒にとっては、とてもいいことです。未開な人間を、キリスト教徒にすることで、人並みの暮らしをさせることになると、彼らは信じているようです。
その目的を宣伝して寄付金を募り、活動資金にしているのでしょう。
しかし、いくら文明国からは、劣っているように見えても、その土地に暮らしている人にとっては、なくてはならないものごとがあります。伝統的な医療の知識や、さまざまな意味での文化体系です。
一部の教会は、それを頭から否定し、破壊しているのです。
そういった教会は、アメリカなどの文明国に本部を持ちます。
その信者たちは、教会の布教活動をいいことだと信じ、お金を寄付します。
そんな教会の関係者にとって大事なのは、自分たちの宗教なのであって、現地の人のことは、じつは考えていないことが多いのです。
今回は、たまたまチュークの例をあげました。
同じことが、アジアの各地で行われています。
それを私たちは、あちらこちらで見聞きしました。
キリスト教徒の方たちには、そういった現地の文化を破壊することにつながる、布教活動が、本当に相手のためになるのか、今一度考え直していただきたいものです。