チュークには建物があまりない。
一番立派な建物は空港だ。
島唯一の高校は、戦前に日本が建てた、病院を流用しているとか。
空港の次に立派なのは、教会だ。
さすがに教会。内装はサイパンとかわらない。
カソリックとプロテスタント、計4っつもの教会がある。
ミサや結婚式、葬式が行われる。
普通の人の家は、二種類に分かれる。
ひとつは、海岸に近い、猫の額ほどの平地にある。
政治家と血縁のある人の家だ。
コンクリートづくりの、しっかりした家である。
もう一つは、斜面側に住む人たち。
島にある建材でつくられた、掘っ立て小屋だ。
仲良くなった家族の家。
寝る場所のほかは、何もない。
水は、山の上の清水からひいてくる。
小野田少尉顔まけのサバイバル生活。
島には現金収入のすべがない。
かつて空港をつくるときは、日本の建築会社が、現地人を雇った。そのときだけ、島に仕事ができた。
他は、ホテルのアルバイトぐらいなもの。
現金は、それでも必要である。
薬を買ったり、学校はただだけど、文房具を買ったりしなければならない。
そのお金を得るために、グアムなどへ、出稼ぎに出る。
服は、出稼ぎをしている家族が送る。
何とか現金を得ようと、小さな商売をやる人もいる。
コーヒー一杯25セント。25円。
タロイモ弁当1ドル。100円。
小さな、小さな儲けだ。
しかしチューク人は、ぐうたらなわけではない。
もちろん南の島なので、そんな人もいる。
だがほとんどは、この暮らしを何とかしたいと、思っている。
だから、さいしょに会った少年の夢が、「政治家」だったのだ。
やっと、事情が飲み込めてきた。
政治を変えないと、どうにもならない。
ミクロネシア連邦では、政治家になるということは、我田引水すること。
他の国からの援助を、自分の家族にだけひいてくる。
それが当たり前なので、誰も疑いをはさまない。
魅惑のチューク、ちょっと夢がさめた気がした。
(つづく)

