ホテル街を抜けて市場をめざし、歩くこと10分。しつこいようだけどバイクがすごい。十字路をわたるのは命がけ。ドンパチやってる戦場をかけまわってるよう。私たち観光客だけじゃなく、地元民も必死の形相でわたる。60歳くらいのおばあちゃんが、バンザイしてぎゃーぎゃーわめきながら走ってわたる。「撃たないでェ!」って言ってるようにしか見えない。
やっとのことで市場に入りました。入った瞬間、いきなりかつら屋。金髪の縦ロール、黒髪のストレート何でもあり。それに目をうばわれていると、Tシャツ屋の姉さんがたから、「おねーさーん、やすいよー」の声。何でお姉さん? ピンク色のピアスとチビTのせい? つい調子にのって、ベトナム航空のスッチーみたいに気色悪く笑って「ハーイ」と。
その反応が面白かったのか、「おねーさーん」コールで一瞬騒然となる市場。タイ語で話かけてくるおばちゃんもいて、どうも日本人かタイ人のおかまちゃんだと思われたみたい。その路線も面白いじゃない、どうどうと受けて立ちましょう。
ミラー付き、きらんきらんのチャイナドレスとか、金魚みたいなカクテルドレスをすすめられるままに手にとっていると、横からピンクの服の姉さんが「コーヒー、安い」。ベトナムコーヒーの味が気に入ったのでついて行くと、「そこ座って」。
「足きれいきれいにするよ、日本人みんな好きね」
ペディキュアをしてくれるというのです。でもせまい市場の、やたらと店が連なってるどこでやるのか。首をかしげていると、「くつ脱いで」
コーヒー屋さんがビューティーサロンに早がわり。「誰がやるの?」「わたしやるよ」どこからともなくネイルカラーの一式を持ってきて、爪にぬりぬり。
なぜか周りのお店の店員がわらわら集まってきて、出来上がっていく爪をのぞきこんでいる。さすがに器用な姉さん、爪があっという間にどピンクに染まった。
「キラキラもつける?」
うなづくと、ラメをぺたぺた。
「結婚してるの?」
「してなーい。あなたは?」
「してない。ベトナムはお金ないと結婚できない」
ベトナムは女性にお金がないと、働きづめでいい男性に会うひまがないのかな。ベトナムの若い人は真面目なんだな。と、その時はそう思った。だが後に公園の暗い道で、これみよがしにバイクにまたがってチュッチュするカップルを見て、自分の甘さに気づいた。
バイクの上なら、何をしてもいいという常識でもあるのか、むわんむわんにセクシームードを撒き散らし、どえらいことをしている若い衆を見て、ベトナムは一筋縄でいかないと、まことにそう思ったのでした。
さて市場ですっかり綺麗な爪をゲットした私は、近くのマッサージ屋にいたセンセイとおちあって、路地裏の駄菓子屋さんに入りました。
「ベトナムのマッサージはすごいよ。ごりごり凝りつぶされちゃった」
「市場の人もすごいね。商魂たくましくて」