バリア(障壁)~18
もちろん香織にはその事を話さなかった。
私は色々な質問をし、香織は少し浮かれたように答えた。
私の瞳から、香織が入り込んできているのが分かった。
久し振りに女の子と夢中になって話をしたような気がする。
最近、私を取り囲む女たちは最悪だ。
将来有望な(将来お金を運んでくれそうなと言った方が正しいかもしれない)バイクレーサーの卵と言う肩書きしか見ていない。 いつしか肩書きが取れる日が来たなら、奴等は引き潮のように去っていくだろう。
どの女も抱きたいと言えば自らスカートをまくし上げる・・・
残りのビールを流し込み、時計を探した。
店内には時計が無かった。 そういえば、スナックのような店には時計を置かないんだっけ。
香織はまだ来ていない。仕事先の美容室から来ると言っていたので20時くらいだろう。
「すみません、今何時ですか?」
百合子ママに聞いた。
「ちょうど8時よ、克哉君誰かと待ち合わせ?」
いえ、と答えてビールを追加で頼んでからもう一本煙草に火を付けた。
今日は開店初日なので店内はもう満員御礼状態だった。 百合子ママはあちらこちらのテーブルに顔を出し、名刺や店の連絡先が彫り込まれたライターを渡してまわっている。
カウンターの中も昨日プレオープンに招待されていた百合子の同級生が数名手伝いに来ている。
香織が来るまでの間、私は百合子を眼で追っていた。
夫は別居が始まってから、全くお金を出さなかったと言う。
しかし、だからといって不倫が認められる行為とは私は考えない。
塚田にも夫人が健在だ。 しかも昨日プレオープンに来ていた。
塚田夫人は百合子を終始眼で追っていた。
「私には関係ない」
そう呟いてビールを飲み干したとき、店の入口の鈴が鳴った。
約束どおり、香織が現れた。
次回へ続く・・・
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