『認知症ケアの倫理』第16回読書会レポート① | 寺田真理子オフィシャルブログ

『認知症ケアの倫理』第16回読書会レポート①

2023年1月12日(木)に『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』の第16回読書会を開催させていただきました。ご参加のみなさま、ありがとうございました。以下にレポートをお届けいたします。

 

 

今回は95ページの「遠近法主義と法律」から読んでいきました。遠近法主義に関連して、2冊の本を紹介しました。1冊目は『岐路の前にいる君たちに』という哲学者の鷲田清一さんの式辞集です。本書の70ページから71ページにかけて、「正しい大きさの感覚」について言及されています。少し長いですが引用します。

 

 

 

“ここで《正しい大きさの感覚》とは、身体の容量、ボリュームにもとづくそれのことです。人間は自分の身体の大きさを物差しとしてしか世界を測れないからです。じじつ、わたしたちはこれまで、みずからの身体を基として世界を測定してきました。左右に大きく拡げた腕の幅、指先から肘までの長さ、拡げた掌の親指と小指の隔たり。これらを単位にものの大きさを測ってきました。あるいは、歩数で距離を測ってきました。世界を測るとは、みずからの大きさを手がかりとして、正しい大きさにあるものたちのあいだの均衡を知るということなのです。そしてそのことをつうじて、ひとは宇宙のなかの自分の大きさ、小ささを知るのです。

 

 そういう意味で、世界のリアリティの基は個々の身体にあると言えます。そしてこのリアリティは、まずは身近にある他者の身体とみずからのそれとがいわば生身でまみえ、交感する中で、時間をかけてじっくりと形成されていきます。

 

 が、ものの大きさ、宇宙の大きさは、現代社会にあっては、テレビやスマートフォンの映像でかんたんに相対化されてしまいます。指先で、あるいはボタン一つで、どうにでも拡大/縮小できるからです。ここでは人間の存在が大きくなりすぎて、他の存在がみなまるで操作の対象に扱われてしまう。この世界にあるものたちの間の均衡が揺らいでしまうのです。そして長田さん(引用者注:詩人の長田弘さん)がもっとも憂慮したのは、このことで、《想像されたものの正しい大きさの感覚》までもが傷つけられてしまうのではないかということでした。”

 

自分が何に焦点を当てているかによって見えるものもその大きさの感覚も変わってきますし、エコーチェンバー現象にもつながる話かと思います。

 

 

 

 

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会場:オンライン

参加費:2,200円(税込)

主催:全国コミュニティライフサポートセンター

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