『認知症ケアの倫理』第3回読書会レポート③ | 寺田真理子オフィシャルブログ

『認知症ケアの倫理』第3回読書会レポート③

2021年12月9日(木)に開催した『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』の第3回読書会のレポートをお届けいたします。

 

第3回読書会レポート①はこちらをご覧ください。

第3回読書会レポート②はこちらをご覧ください。

 

 

33ページには、次の箇所が登場します。

 

専門職に対してだけでなく、家族に情報を与え、他の人にもそうしなきゃと思うように今はなりました。友人たちも状況を知っています。中にはとても理解がある友人もいます。あまり耐えられず、もう訪問したくなさそうな人もいます。だけどどこまで話したものか……

それに夫は一、二度万引きをしそうになったのです。ここでも「夫は認知症があります。盗ってしまってすみませんでした。お返しします。よろしいですか?」と伝える必要を感じました。どこまで伝えるべきなのか……

 

この箇所に関連して、家族のことをどこまで他者に伝えるかについて話し合いました。

 

「娘が脳性麻痺の診断を受けたときに、医師が家に来て診断を告げられたのだが、夫と姑がいた。イギリス人の姑が『じゃあ、親戚に知らせていいよね?』と訊いてきて、抵抗はあったものの、ノーと言えなかった。姑は家族に知らせたが、その中には私のよく知らないような親戚も含まれている。自分自身では日本の家族には言わなかった。悲しませると思ったからだ。知らせなくて良かったと思っている。夫がもし認知症になったら誰に言うかと考えると、夫のことを知っている自分の友人などには言うと思う。地域のあり方がイギリスでは日本と違う。買い物なども日々行くのではなく、週に1回大型スーパーに行って大量に買い込む形になるので、つながりのはぐくみ方が難しい。ヨーロッパでも地域づくりが見直されてきている」

 

「最近祖父と一緒に暮らし始めた。ご近所の方のほうが祖父のことをよく知っている。言いづらいことは今は特にないが、これから足が弱ってくるに従って出てくるのかもしれない。そういうときには前もって言っておいたほうがいいのかもしれない」

 

「デイサービスに通うのを楽しみにしていた高齢者が、コロナと診断された家族の濃厚接触者になった。濃厚接触者だと2週間の隔離が必要になるため、デイサービスにその間通えない。陽性のほうが隔離期間が10日で済むため、早く復帰できる。そこでPCR検査を受けさせて陽性の診断をもらい、10日間で隔離期間が解除になった。ところがデイサービスに通おうとしたら断られてしまった。陽性者への差別がある現場を見ると、検査を受けないほうが得なのではないかと思ってしまう。世の中では濃厚接触者のほうが受け容れてもらえるようだ。結局この事例では1ヵ月間デイサービスに通えなかったために認知症が進行してしまった」