『認知症ケアの倫理』第1回読書会レポート③ | 寺田真理子オフィシャルブログ

『認知症ケアの倫理』第1回読書会レポート③

『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』の第1回読書会のレポートのつづきです。

 

第1回読書会レポート①はこちらをご覧ください。

第1回読書会レポート②はこちらをご覧ください。

 

 

結果尊重主義には限界があることを実感した後、義務論(義務に基づく)倫理について見ていきました。15ページの「ケアの義務」と結婚の誓いに関連して、配偶者との死別後に、その親族の介護をしたくないという理由で、縁を切るために死後離婚をする人が増えていることについても触れました。

 

16ページの「もし第二次世界大戦中にあなたがアンネ・フランクのユダヤ人家族がある家に隠れていることを知ったとしたら、ゲシュタポに尋ねられたときに、あなたには真実を告げる義務があるのでしょうか」という事例のように、義務論にも限界があります。

 

そこで次に、17ページの原則主義を見ていきました。

 

“①自律尊重原則:自分の身に何が起こるのか、また何をされるのかを、人は決定できなければならない。

②善行原則:私たちは自分が介護する相手に対して善をなそうと努めなければならない。

③無危害原則:私たちは人に危害を加えることを避けなければならない。

④公正原則:人は公平・平等に扱われなければならない。

 

これらは「医療倫理四原則」としても知られていますが、下記を加えることもできます。

 

⑤忠誠原則:私たちは常に真実を告げ、正直でなければならない。

⑥秘密保持原則:私たちは介護する相手に関して取得した情報を、安全と個人情報保護のために常に秘密にしなければならない。

 

原則に従っていればうまくいくかのように思えますが、実際にはこれらの原則同士が対立する場面もあることが19ページ以降の事例を見ていくとわかります。21ページには、赤ちゃんの安全のためには帝王切開が必要だが、針への恐怖心が強いために、点滴が必要な帝王切開を拒否しているという「恐怖症の妊婦」の事例が登場します。

 

この事例に関連して、コロナワクチンや、テキサス州で9月1日に発効した人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁ずる厳格な法律についても触れました。性的暴行や近親相姦による妊娠も含め、妊娠6週目以降の中絶を禁止するものです。

 

6週目では妊娠に気づかない女性が大半ですし、中絶のためには中絶が合法とされる州に行かなくてはならず、費用面の負担も生じることから、かなりハードルが高くなります。また、同法では中絶を行った医師だけでなく、病院まで連れて行ったタクシーの運転手なども一般市民が訴えることができます。愕然とする内容で、今後の展開も気になるところです。

 

 

 

 

(つづく)